チームラボは、デジタルコンテンツの世界で次々と話題作を手がけている企業。前例がないことに次々に挑み、ITの世界で急激に知名度を上げています。個人の売上目標やら個人予算なんてクソ食らえで、楽しい仕事をしようとしているといいます。代表の猪子寿之氏にお話を伺いました。(撮影/石郷友仁)

売り上げ目標も個人の予算もない
そもそも営業もいません

チームラボ代表の猪子寿之氏(左)と筆者

本田 勤務時間はやっぱり自由なんですか?

猪子 意外に思われるかもしれませんが、10時出社というルールがあります。でも、半分くらい守ってない(笑)。いや、厳密に言うと、7割くらい守っていないかも(笑)。働く時間は標準があったほうがいい。基本的には、一緒に働く時間が長ければ長いほどいい、と思っています。だから、会社には来ないといけません。家で仕事するというのは、ありえない。在宅ワークなんて、考えたこともない。もちろんちょっとした文章を書くとかなら家でもやりますが、本業を家でやることはありません。

本田 給料はどうですか?

猪子 給料は普通だと思います。最近のIT企業はすごく高いところもありますから、比較的知名度があるIT企業の中では、低いほうと言ってもいいと思います。

本田 社員は、給料ではない魅力を感じて、チームラボで働いている、ということですね。

猪子 うちはボーナスも全社員一律です。そもそもボーナスに変化をつけるための評価制度がありません。普通の会社では目標があり、それをどれだけ達成したか上司と確認する面談などがあり、査定によって評価が決まり、ボーナスの額や昇給額などが決まっていきますが、ボーナスは、利益から割り当てられる社員数で割るだけ。したがって、赤字になれば全員がボーナスゼロ。大きな利益が出れば、全員が潤うという仕組みです。

本田 では、給料はどうやって決めているんですか?

猪子 経営会議で決めています。各役員が自分に近い人の仕事ぶりを見て、優秀だと判断すれば、給料を上げていきます。

本田 経営会議はどれくらいの頻度で行われるのですか?

猪子 月に一回。昇給は随時です。社内での高い評価を受けて昇給する社員も少なくない。上がることはあっても、下がることは基本的にありません。

本田 こちらの社員の方は給料に関して、あまり関心が高くないそうですが。

猪子 社員同士でも、給料について話すことはまずありませんね。社長自身、報酬とモチベーションにはそれほど因果関係がないことを社員によく話しています。それと有名な実験があるんです。同じことを追求するのに、報酬なしのグループと、報酬ありのグループがあった。最終的にどちらがいい結果を出したのかというと、報酬なしのグループだった。お金を目的に頑張るのではなく、やりたいことを集中してやったらいい結果が出た、という状態を作ることがベストだと思っています。

本田 仕事そのものに意欲を持っている社員が多い、という声が多いのも納得できますね。

猪子 うちは、売り上げ目標もないんです。個人の予算もない。そもそも営業もいません。働く空間や環境で、集団のクリエイティビティや生産性がどう上がるかだけを最重要視しています。コミュニケーション能力もいらない。今の時代って、言葉で説明できて理解できることって、くだらないものだから。iPhoneも他のスマホも、言葉で説明したら変わらないじゃないですか。でも、両者は全然違うものでしょう。

 数字達成のための仕事になってしまうと、無理をしたりズルが起きたりする可能性もあります。社員をどうモチベートするか、必要なスタイルが変わってきているのです。数字を上げればボーナスが上がる、というナビゲートの仕方ではなく、いいものを作って世の中を変えよう、というナビゲートにこそ反応する。そんな時代がもう来ているのではないか、と思うのです。