日本人の「創造性」を上げるには?
―― 小林さんは例外で、どちらかというと日本人は柔軟に考えるのが苦手なようにも思います。柔軟な思考を育むにはどうすればいいと思われますか?
レヴィット 私は日本文化の専門家の振りをしたくはありませんが、大学で日本人に教えることもあるので、一言、日本の教育について意見を言わせてください。
私が学生を見てきた限りでは、日本人はとても能力が高く、信じられないほど勤勉です。でも創造性には欠けるところがあります。
一方アメリカ人はそこまで能力が高いわけではなく、まったく勤勉でもありません。でも創造力は豊富です。
つまり、日本の教育体系でよい学校に進学していくには、あまりにも多くのことを記憶しなければならないのではないかと思うんです。もう少し子どもに対してゆるくしたほうが、子どもにとってプラスになるのではないでしょうか。
学生と接してきた経験から言うと、もともと創造力がそれほどなさそうな学生でも、創造力を必要とされる状況に置かれると、かなりの創造力を発揮するものです。
―― とはいえ、本で書かれているような「フリーク」(常識の枠に収まらない人、既存の慣習にとらわれない人)のような考え方ができるのは、先天的な要素が大きいようにも思います。後天的にもできるようになると思われますか?
レヴィット 私自身のことで言うと、自分の考え方の独自性は、父親によって育まれたことは間違いありません。父はとても変な考え方をする人で、腸内ガスの世界的権威です。
私と同じで、ほとんどの人があまり考えないようなテーマを進んで研究しているという意味では、血筋もあるのかもしれませんが、やはり育てられ方から大きな影響を受けたと感じています。
創造的な考え方はだれでもできます。日本の子どもの思考に柔軟性が欠けたところがあるとすれば、それは教育の問題だと思います。
もちろん、アメリカの教育システムを日本に押しつけたいということではありません。
アメリカ人からすると、日本の子どもは小さいころからあまりにも勤勉さを求められすぎているように見えますが、アメリカはその逆の意味で極端です。
両極端があるときはその中間こそが、より良い答えだという可能性があります。
―― ノーベル賞の受賞者でも、日本は20人ほど、アメリカでは340人も出ていることを考えると、やはりフリーク的な思考は日本人には苦手なのかと思えてしまいます。
レヴィット そういう面がある一方で、エンジニアのノーベル賞というものがあったとしたら、日本人のほうが確実に多くの受賞者を出すでしょう。