ボルトよりはるかにすごい「日本人アスリート」
―― 本の中で、「フードファイター」として知られる小林尊さんのことを、ひとつの章を丸ごと割いて取り上げられていました。どういうきっかけで小林さんに注目されたのでしょうか?
レヴィット 初めて彼について知ったとき、多くのアメリカ人が非常に興味を持ちました。
私自身が彼についてもっとよく知りたいと思ったのは、ウサイン・ボルトが世界選手権の100メートル走で9秒58という圧倒的な世界記録を出したときです。ボルト以前の世界記録は9秒74ですから、ボルトは記録を1.6%も縮めたわけです。
このとき、コニーアイランドのホットドッグの早食い大会において初出場で優勝したコバヤシのことが頭に浮かんだんです。
彼の記録はすさまじいもので、それまでの記録が12分の間に25と8分の1本を食べたというものだったのに対し、コバヤシは同じ時間で50本を食べて優勝しました。
ボルトはアスリートとしては史上最も優れた選手の一人だと思いますが、コバヤシのこの記録の破り方は100メートル走の新記録に換算すると、4秒87という驚異的な数字にあたります。
そこで私は共著者のダブナーと話して、コバヤシを見つけ出し、話を聞くことにしたんです。実際に会うと、思っていたよりもはるかに興味深い話が聞けました。
彼が早食い選手権で勝つために考えだしたさまざまな食べ方は才気あふれるもので、斬新で、それまでの常識を何もかも変えてしまうほどでした。
コバヤシは、ある問題に直面すると、他の人が考える方法に縛られずに、信じられないほど独自の方法で思考ができる希有なタイプの人間です。
私は冗談半分に、「コバヤシは史上最も偉大なアスリートだ」と言っています。