『ヤバい経済学』で全米に経済学ブームを巻き起こし、ノーベル賞の先行指標とも言われるジョン・ベイツ・クラーク賞を受賞したシカゴ大学の経済学教授スティーヴン・レヴィットに、どうすればすごい発想ができるのか、どうすれば斬新なアイデアを生み出せるのか、インタビューを行った。レヴィットが絶賛する、「100メートルで考えると、4秒87にあたるすごい記録」を持つアスリートとは?
仕事に使える発想法「死前検証」とは?
―― とくに、仕事やビジネスにおいて生かせるような「思考法」はありますか?
スティーヴン・レヴィット教授(以下、レヴィット) 『0ベース思考』では「死前検証」というアプローチを紹介しました。
これはある仕事のプロジェクトがあるとして、そのプロジェクトに関係するすべての人に、「もしそのプロジェクトが失敗するとしたら、どういう理由で失敗すると思うか」ということを書いてもらうという方法です。一人ひとりに、考えられる理由をすべて書き出してもらうんです。
この話をすると、この方法の肝は「早めに失敗について考えることだ」と思われることが多いのですが、ポイントはそこではありません。死前検証で大事なのは、これによってメンバーに、「自分たちがすでにわかっていること」を口に出す自由が与えられるということです。
多くの組織において、部下は、トップや上司が何を言ってほしいのかを想像して発言をするので、異論や反論が出にくい傾向にあります。日本は文化的な背景があるので、この傾向は他の国よりも、ずっと強いのではないでしょうか。
リーダーの視点から言うと、この死前検証は部下たちに、本音を率直に話す「義務」を与えるすばらしい方法なんです。会社のような組織でなくても、そもそも人が本音を言うのは難しいことです。しかし、こうして義務化すれば、多くの意見を引き出して、多角的にものを考えることができるようになります。