「日本の常識は世界の非常識」を前提に
要所を押さえて統治すべし

 今回のケースで、もう一つ無視できないファクターがある。それは、経営者の意識やビジネスの手法について地域的な違いがあることだ。

 中国で10年以上実際のビジネスを行ってきた日本人経営者にヒアリングしてみた。彼は、「今回のような事例は、中国では日常茶飯事に起きる」と即答した。

 中国の創業経営者の中には、企業と自分の個人の勘定の区別がつかない人もかなりいたと指摘していた。そのため、経理を創業者一族に任せては、ガバナンスの働く余地は限られてしまい、多額の簿外債務が、ある日突然、表面化することもあり得ると話した。

 それは、中国に限ったことではない。欧米諸国などの先進国でも、わが国のビジネス慣習がいつも通用するわけではない。ビジネスに慣れていない新興国に行けば、そうした事情はもっと深刻になるかもしれない。

 昔、海外赴任をする前、先輩連中から言われたことがある。それは、海外でビジネスを行う場合、日本の常識が通用すると思わない方がよいということだった。というよりも、「日本の常識は世界の非常識」と考えた方がよいかもしれない。

 一方、M&Aを結実させる時点で、しっかりしたデューデリジェンスを行うことを励行すれば、リスクを限定することができるはずだ。M&A案件では多くのケースで時間との競争になるが、必要な手続きを拙速にして多額の損失を発生させるのは、M&Aの機会を逃すよりも企業のコストが大きくなることを肝に銘じるべきだ。

 また、日常の業務の中で経理・財務などの要所をしっかり押さえることによって、企業内のガバナンス機能を明確に機能させるのは可能だ。逆に言えば、当たり前のことを当たり前に行うことこそ、最大のガバナンス機能の確立につながるはずだ。