戦後70年ぶりの大改革が実現
「18歳選挙権」を若者はどう見る?
6月17日午前、国民が選挙に行ける年齢を18歳に引き下げる公職選挙法改正案が、参院本会議にて全会一致で可決・成立した。
安全保障法制や労働者派遣法などの改正をめぐって大炎上中の今国会だが、これほど大きな改革が実現したことは、特筆に値する。国民が選挙権を与えられる範囲が広がったのは、実に戦後70年ぶりのことだ。
この大改革を見据え、すでに若者の投票率向上運動などが盛んになっており、このこと自体は社会にとって非常に前向きなことだろう。
特に筆者が注目しているのは、大学構内に投票箱を設置しようという動きである。中央大学2年生の古野香織さん(19歳)は、来年夏に行われる参議院議員選挙を見据え、大学内への投票箱の設置を目指す団体「Vote at Chuo!!」の代表として活動している。古野さんは大学に入学した頃から、18歳選挙権引き下げのためのキャンペーンに参加し、若者の投票率が低いことに危機感を持っていた。
「18歳選挙権が実現すれば、大学生全員が選挙権を持つことになります。自分の通っている大学で何かアクションを起こしたいと考え、この活動を始めました。いつも通っているキャンパス内に投票所があれば、投票率向上につながるはず」と語る。
しかし一方で、民法で定める「成年」の年齢が20歳と定められたまま、選挙に行ける年齢だけを引き下げることに反対する人たちが多いのも事実だ。「飲酒、喫煙、契約なども10代から認めてもよいか」と問われれば、反対する人は多いだろう。「未成熟」な若者たちに投票権を与えることに、否定的な声も少なくない。
そこで本稿では、今回の選挙権拡大改革の持つ意義について冷静に考察してみたい。
そもそも、なぜ投票権は「20歳」からだったのだろうか?
10代の若者が選挙へ行くことは、本質的に「良いこと」なのだろうか。言い換えれば、選挙に行ける年齢は、本当に引き下げるべきだったのか。それとも、もっと引き下げる方がよいのか。18歳は妥当なラインなのか。
若者が選挙に行けない理由が「判断能力のなさ」だとするならば、大人だって判断能力があるか疑わしい人はたくさんいる。果たして、選挙という制度そのものが抱える限界とは何か。
一方で、「若者の声」という綺麗な言葉ばかりが飛び交うものの、「若者の声」とはいったい何なのか。若者には何か特別な社会への要望があるのだろうか。