川崎重工神戸に修理入港中の「そうりゅう型」と「おやしお型」 Photo:kenichirou Akiyama   拡大画像表示

 科学技術の粋である軍事兵器は、研究開発費だけでもそのコストは莫大だ。一方で買い手は国しかない。

 現在の防衛省の調達方式では、企業が兵器製造に掛かったコストを申告し、それに規定の利益を乗せて契約価格とする仕組みで、想定以上の利益が出た場合には返納せねばならない。企業努力を重ねコストダウンを図れば図るほど、その収益性は低くならざるを得ない。

 今回オーストラリアに技術供与する「そうりゅう型」潜水艦1隻の価格は528億円(2010年度予算)。長時間の潜航を可能とする非大気依存推進(AIP)という新システムを搭載し、通常動力型潜水艦(原子力ではない潜水艦)では世界最高と言われる性能を実現しながら、前型である「おやしお型」の価格581億円(1993年度予算)より、約50億円も安くなっている。

 半面、もし諸外国への輸出となれば、この価格以上の金額が設定されるのは当然であるが、500億円以上もする“商品”を購入できる国が、そうあるとも思えない。

 今回のオーストラリアの例は共同開発となる可能性が高く、こうした諸外国に向けた技術供与ビジネスが盛んになるとの声も聞こえる。確かにその可能性はある。しかし技術供与では「潜水艦1隻よりも収益性は低い」(潜水艦建造実績のある防衛大手役員)ことは自明の理だ。

人も設備も足りない
技術者の維持には多大なコスト

 第二の理由は、キャパシティの不足だ。

 潜水艦建造では、専門の技術者が要る。特に潜水艦における電装や溶接に携わる者は、ごく少数の極めて特殊な技術者で簡単に育つものではない。さらに防衛省による技術者の認証資格の問題もある。これは3ヵ月間、潜水艦建造に携わらなければ資格が取り消され、また最初から講習を受講させなければならないというものである。

 こうした特殊技術者を活かす目的もあって、企業側にとっては収益性の低い潜水艦分野を存続させているのだが、認証資格をはじめ制約も多く、発注の数も限られる。半ば“お義理”で防衛産業に関わっているというのが、各社の現実である。