香港が民主化に辿りつきやすい
フェーズは「0→3」か「0→10」か?

 今回の法案は0→3の道筋を示したものであり、反対派たちが求めていたものは0→10であったと振り返ることができるが、仮に今回、あるいは2022年に行政長官を選ぶ際に3に辿り着いているとして、将来的に3→10に行く可能性は極めて低いといえるが、それでも0→10にジャンプアップする可能性よりは高いと言えるのではなかろうか。

 私が関心を持っているのは、(抽象的な話で恐縮であるが)北京と香港が普通選挙の在り方や枠組みを巡ってせめぎ合う過程において、5~8あたりのどこかに落とし所を見出すような交渉に入った場合、それは0からのほうが辿り着きやすいのか、それとも3からのほうが辿り着きやすいのか、という問題である。

 一旦3に辿り着き、そこで固まってしまえば、そこから先に進むのは難しいというシナリオであれば、0に留まった上で、10は無理でも5~8あたりへの進展を目指すほうが、香港の民主化という文脈においては有益であろう。逆に、5~8を目指す上で、何はともあれまずは3まで辿り着かないことには話にならず、0に留まっている限りにおいては永遠に0のまま、ということであれば、香港の市民社会としてまずは3へ進む努力を怠るべきではないのであろう。

 それでは、中国共産党はこれからどう出てくるであろうか。前出の全人代常務委員会報道官のコメントにもあるように、よほどのことが起こらない限り、中共は2014年8月31日に下した決定に基づいた法案から妥協することは考えづらい。換言すれば、中共の香港行政長官普通選挙を巡るボトムラインは3であるということだ。

 “よほどのこと”とはどういった事態を指すのだろうか。

 私が想定する「よほどのこと」は3つある。

(1)香港社会が断固として北京の中央政府に反対・抗議を示し、北京側が妥協しないと事態が収拾しないような局面。

(2)米国をはじめとした西側諸国が香港における真の意味での民主選挙を保証しないと、中国に政治的・経済的な制裁を加え、中国を孤立させる立場を露わにする局面。

(3)中国国内で政治的動乱が発生し、共産党によるガバナンスが効かなくなり、その間に、どさくさに紛れて香港が自らの市民の意思に従って行政長官を選ぶという局面。