あなたの人生を生きるのは、
親か? あなたか?

はあちゅう『嫌われる勇気』の中で、ある意味いちばん心に刺さったのは、「『これは誰の課題なのか?』を考えましょう。そして課題の分離をしましょう」(本編150ページ)という部分かもしれません。一度、電子書籍で読んだ後に紙の本を買い直しているんですが、それは、この部分を親に読んでもらいたかったからなんです。

岸見 “課題の分離”はこの本の中ではかなり重要な部分です。アドラーは「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」(本編71ページ)と言い切っているのですが、ほとんどの悩みは、他者の課題に踏み込んでいる場合か、自分の課題に踏み込まれている場合に生まれます。だからここを理解できれば、人生の悩みの半分はなくなると言ってもいいほどです。カウンセリングも「これはあなたの課題、これは誰々の課題」と、もつれた糸を解きほぐす作業がとても大事です。でもはあちゅうさんは、なぜそれをご両親に?

はあちゅう 実は私の両親は仲があまりよくないのですが、小さいころからそれは「私のせいなんじゃないか?」と悩むことが多かったんです。なんとか仲直りしてもらおうとするんですがうまくいかなくて、私自身も傷ついて……。でもある日、「それは、父と母の間の問題であって、私が悩んでも仕方がない」と気づいたら、心が軽くなりました。そうすることで親には冷たい娘だと思われてしまうかもしれないけれど、「これは私の人生なのだから」と、切り離して考えていくしかないのだと。

岸見 おっしゃるとおりです。転職や結婚など大きな決断をするときも、親御さんの意向をとても大切にする“優しい”人は多いけれど、「じゃあ、あなたは誰の人生を生きているの?」と問いかけたくなります。実のところそれは、転職や結婚がうまくいかなくなったときに「本当はこうしたくなかったのに、親が○○しろと言ったから」と言い訳をするための“隠れた目的”にほかなりません。

はあちゅう 親が悲しむかどうかは、あくまでも親の課題、ということですね。