資本金1,000万円にして年間売上500万円。受託専門出版社・B社は創立10余年にして、このような惨憺たる業績に甘んじていた。研究者の論文を書籍にするというニッチな市場で、仕事は向こうからやって来ると踏んでいたA社長は、筆者に自ら営業するよう進言され、みごと売上を伸ばすことに成功。しかし、その先にも経営課題は山積していた……。中小企業に経営計画が必要な理由を考えてみよう。
【CASE2】 出版社 B社
・創業 1982年4月
・社員数 9人
・売上推移 559万円(1996年3月)→3,400万円(2008年3月)
・事業概要 個人書籍の受託出版
「じつは、私が持っていった企画が好評でして……」
50代にして初めて自ら営業活動を行ない、その努力が売上増という目に見える結果に結びついてきた喜びを、A社長は夢中で私に語り続ける。
中小企業だからこそ、
こまめに経営計画を見直そう
たしかに、B社の売上は社長の営業努力によって着々と伸びて行った。だが、同社は、社長と奥さん、あとは経理を任された年配の女性が1人の合計3人で日々の業務を回している。
編集作業を行なっているのは社長と奥さん。ところが、社長は日中営業に走り始めたため、編集作業は毎晩深夜までに及ぶようになった。また、当然仕事量が増えれば奥さんも臨戦体制で臨まざるを得ない。
売上が伸びることは重要なことだが、見失いがちになるのはそこにかけるコストである。また、これまでB社では、資金繰りを社長の頭の中で行なっていたために、忙しさにかまけて資金の入出金の時期を把握せず、気がついたら支払いができないという事態に陥ってしまった。
こうしたことを避けるためには、経営計画が不可欠である。私は社長から連絡を受け、早速経営計画の策定に取り掛かった。
「売上は増えていますが、資金繰りは大丈夫ですか?」
「外注費が増加していますが、1つひとつの仕事について個別に計算し、しっかり利益を確保していますか?」
「売上や外注費、交際費、商品の原価等をグラフにすると次のようになります。売上の伸びに対して経費がかかりすぎていますね。決算まで時間があるので改善していきましょう」
次々と質問し、決算までの利益確保についてアドバイスを行なう。企業は生き物だ。経営計画を立てて、現時点から決算日までのレールを引かなければよい経営はできない。