トップが「ティーチャー」では
会社は伸びない

前回は、事例を挙げてお客さま志向の「小さな行動」が社員のやる気を高め、会社の業績を飛躍的に向上させるというお話をしました。

 それでは、その「小さな行動」を徹底して部下にやってもらうにはどうすればいいのでしょうか。それは「指揮官先頭」です。言葉遣いや行動など、経営者自身が率先垂範するのです。

口先だけで動かない経営者には誰もついていかない小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

 部下にはやらせるけど、実は自分はやっていない。こういう人はけっこう多いのですが、口先だけで自分は動かない経営者に、誰もついていきたいとは思いません。こういう人は、リーダーではなく、「ティーチャー」なのです。

 ティーチャーは、どこかで聞いた話や、感銘を受けた本の話などを朝礼や会議でしゃべって、その通りやれば、うまくいくと思っています。それでは評論家と変わりません。それでは、部下はついてこないのです。経営者のその話を聞きながら、部下は「あなたこそ頑張れよ」と思っているのです。

 でも、リーダーは違います。真のリーダーは、自らが先頭に立って、覚悟をもって行動する「指揮官先頭」の気持ちがあります。指揮官先頭は、戦前の海軍兵学校で厳しく教えられたことです。困難な状況に直面したときこそ、リーダーは自ら動くのです。先頭に立って行動するからリードする人、つまり「リーダー」なのです。

 リーダーは、まず、自らが先頭に立って行動するのです。リーダーシップを理屈で学べると勘違いしている人がいるかもしれませんが、リーダーシップとは覚悟なのです。自ら先頭に立って行動する覚悟を持っているし、先頭に立って行動することが、社員を動かすことにつながることを知っているからです。先頭に立つので背中を見せるしかありません。

 ティーチャーは、頭でモノを考えるだけです。難しい理屈ばかり並べるのは得意ですが、それでは、いつまでたっても部下は動きません。

 私は、一代で一部上場企業を作り上げた経営者に「頭は臆病だけど、手は臆病ではない」と教わったことがありますが、その通りだと思います。