いかがでしょうか?

 鋭い方でしたら、もうお気づきでしょう。この会話の中から、いくつもの課題が見え隠れしているのがわかりますよね。

「職務が不明確である」「残業が多い状態が続いている」「直接の上司から評価を受けることができない」「秘書職を事務職の延長として捉えている」などといった点から、秘書の不満の声が聞こえてくるのは、私だけではないでしょう。

 本来、秘書室長は、秘書室の舵をとるのはもちろんのこと、経営層と秘書との間の「架け橋」として、様々な課題に向き合い、何か問題があれば改善していく役目を担っています。

 すべてのことを改善していくのは難しいとしても、両者の間に立って、最善の方法を見いだす努力をすることが求められています。時には、妥協案で終わることもあるでしょう。それでも、最善の方法を見いだす努力をした価値は十分あります。

 じつは、この秘書室長のもとには、部下となる30名以上の秘書がいました。秘書室としては、かなりの大所帯です。私は、彼の最後の言葉である「でも、私の仕事のメインは、社長の補佐ですから…」を聞いて、腰を抜かしそうになりました。なぜなら、その言葉から、「私の仕事のメイン(中心)は社長の補佐であり、秘書室をマネジメントするのは、あくまでもサブ(補助的)である」ということが読みとれたからです。

 30名以上もの秘書の皆さんの未来は、どうなるのでしょうか?

 秘書室長お一人で社長を補佐するよりも、30名以上もの秘書(社長秘書や役員秘書)が力を合わせ、社長を含めたトップマネジメント層(役員や取締役など)の方々を補佐するほうが、ずっと効果的だと思いませんか?

 企業によって異なりますが、一般的には2~3年で秘書室長が変わる傾向が強く、マネジメント経験を積むためのステップとして男性社員が秘書室長に任命されることが少なくありません。

 もちろん、秘書室を戦略的に位置づけ、経営層からも秘書からも頼りにされる素晴らしい秘書室長の方もいらっしゃいます。ところが一方で、経営層から絶大な信頼を得ており、組織のことも熟知しているベテラン秘書が、秘書室長になったほうがいいのではないか、そう思っている現役の秘書たちも少なくありません。

 私は、10年間、様々な外資系企業で秘書として働いてきましたが、じつは外資系企業で秘書室長という方に一度もお目にかかったことがありません。秘書室長という役職が、そもそも存在しないのです。これは、すべての外資系企業にあてはまるわけではありませんが、外資系企業と日本企業では、秘書が配属される場所や働く環境はずいぶん異なることを知っていただくために、ここで一言添えておきたいと思います。