インターネットが切り開いた「すばらしき新世界」の1つの側面は、これまで書面で行なっていた情報のやり取りが、インターネットを通じて電子的に行なえるようになったことだ。手紙や葉書がメールに置き換わったのは、その顕著な例である。
メールは個人間の情報のやり取りだが、個人や企業と政府との間で行なう情報のやり取りもある。そして、これも原理的には電子化できる。これまでは書面に書いて役所の窓口まで持参しなければならなかった行政手続きが、インターネットを通じてできるようになれば、状況は大きく変わる。これによって個人の日常生活の快適性があがるし、企業活動の効率性も増すだろう。また、多くのデータは政府が提供しているため、これらをインターネットから入手できることの意味も大きい。
このため、世界のさまざまな国で、「電子政府」への取り組みが積極的に行なわれている。効率的な電子政府を構築できるかどうかは、国の競争力に甚大な影響を与えるだろう。
日本にも「電子政府」がある。これにアクセスするには、「電子政府の総合窓口」(e-Gov)を開けばよい。
まず、どのような構想の下に日本の電子政府計画が進められているのかを見ることにしよう。トップページの左上にある「電子政府の推進」を開くと、「電子政府推進計画」という文書がある。そこには、「ITの構造改革力を追求する政策の一つとして、『世界一便利で効率的な電子行政』の実現が掲げられ」たと書いてある。
世界一の電子行政! 何と素晴らしい計画だろう! そのようなサービスを享受できるわれわれ日本人は、何と幸せなのだろう! そこで、期待に胸を躍らせて、日本の電子政府の中身を見ることにする。
10年近く遅れている検索能力
まずは、政府が提供しているデータを探すために、トップページの「情報を調べる」のなかの「全府省ホームページ検索」を利用してみることにしよう。
ところが、実際に行なってみると、誠に不思議なことに、関心のない対象ばかりがヒットしてしまうのである。たとえば、第2回で述べた「公債依存度」を入力してみよう。これを検索している人は、当然のことながら、公債依存度の推移のデータが欲しいのである。各年度の数字が一覧で見たいし、できれば時系列の推移を示すグラフが欲しい。