東日本大震災を機に
縁あって知り合った女性

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

 この2週間ほど、帰省と仕事兼ねて、日本に戻っていた。出張も兼ねているので、日本ではいろいろなところを転々としていて忙しかったのだが、その合間を縫って、ある女性起業家に会った。仕事ではない。彼女は筆者家族の大切な友人だ。

未経験から始めた農業でいつの間にか大成功を収めた女性に教わった「縁」を生かす考え方とは?(写真は本文と関係ありません)

 東日本大震災の際、関東に住んでいた筆者は、直接被害には遭わなかった。だが当時、2歳児と生後2ヵ月の赤ん坊のいた我が家は、流通の混乱と人々による買い占めで、ミルクやオムツなどの必需品が購入できなくなった。また政府は安全としていたが、小さな子どもにとって放射線の影響がどの程度なのか、不安は拭えなかった。

 そのため、地震から4日後に、九州の友人を頼りに、ある地方の家を3週間間借りして「疎開」させてもらうことにした。おかげで、安全な食材と生活必需品を確保することができたのだが、一つ問題があった。

 いつまでも疎開しているわけにはいかない。筆者も妻も、仕事を持っている。関東に戻る必要があるが、食材について当時不安があった。筆者の住んでいた地域の野菜類は大抵、福島産や茨城産で、それらの野菜がすぐに店頭に戻ってくるとは思えなかったし、野菜が店頭に戻ったとして、大人はいざ知らず、子どもへの放射線影響は心配だった。

 筆者と妻は、疎開先で、関東の家に定期的に野菜を届けるサービスを提供してくれる農業関係者を探した。簡単ではなかったが、いろいろ探しているうちに、オーガニック食材を使ったレストランの関係者から、ある女性を紹介された。

 彼女は、ちょうど個人農家として起業したばかりだった。九州の山間にある畑で、無農薬野菜を作りはじめたが、その顧客を探しているところだった。筆者らは早速、彼女に連絡を取り、実際に彼女の畑に案内してもらった。40歳くらいの美人の女性が畑の畦道で、筆者らの到着を待ってくれていた。ジーンズにTシャツのラフな格好で、「こっちですよ」と笑顔で案内してくれる。

「農薬を使っていないから、汚れてなければ水で洗わなくても大丈夫ですよ」

 そう言って、ミニトマトを枝からもぎ取って渡してくれた。その美味しさには筆者と妻は、目を丸くした。すぐに、野菜の定期購入を申しこんだ。筆者家族が彼女の最初のお客さんだったという。とても喜んでくれた。