社内の縁が人生の縁になった昭和時代
今は多くの会社員が「無縁化」している

 最近、無縁社会という言葉がよく聞かれるようになった。家族、地域のコミュニティ、職場など、リアルな人同士のつながりが断たれ、孤独のまま晩年と死を迎える。そんなイメージがこの言葉にはつきまとう。

 その背景には、数十年にわたる核家族化の進行や、都市化によるコミュニティの弱体化など、様々な要因があるが、「仕事上の縁の低下」という側面も大きい。

 昼間からやっている居酒屋は、今多くの老人たちで賑わっている。たまに覗くと、同じ会社のOBたちが昭和時代と同じく杯をかたむけ、楽しそうに飲んでいる光景を目にする。

 現在病気で療養中の私の老父のところにも、かつての「同僚」が多く見舞いに来てくれるという。

 このように、かつては社内での縁が人生の縁となり、このような定年後のつながりを持てるような人間関係の形成に役立っていた。しかし現在、社内での縁をしっかりと持てている人はどれくらいいるのだろうか。

 数年前に、あるメーカーの研究所でアンケートを取らせていただいたとき、「会社外で付き合いのある友人は何人いますか」という質問をした。

 驚いたのは、実に4割が「0人」という回答だったことだ。「1人」という回答を入れれば、その割合は50%を超える。10人以上いたのは1%程度しかなかった。

 そのアンケート回答者の平均年齢は、30代半ば。その世代の人々の交友関係はほとんど社内に限られているわけだ。

 そして「社会の人間関係に満足していますか」という回答には、「満足」「やや満足」が50%。「不満」「やや不満」が50%だった。