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「経済活動とは、その本質からして未来に対する賭である。したがってそこにはリスクが伴う」(『企業とは何か』)
原始的な経済にさえ、不作、病虫害、災害がある。静的で原始的な経済においても、リスクを避けることはできない。経済が複雑化すれば、リスクは増大する。拡大しつつある経済では、リスクはさらに増大する。単純に見ても、拡大に伴うリスクが付加される。
したがって利益とは、資本主義経済、社会主義経済、古代人経済のいずれにおいても、それらリスクに対する保険料であり、経済活動の基盤となるものである。リスクに対する相応の用意のない社会は、自らを食いつぶす貧困化する社会であるとドラッカーは言う。
しかも利益は、生産の拡大に必要な資本の唯一の原資である。新たな資本は生産と消費の差から捻出するよりほかにない。それが多ければ多いほど、経済は発展する。経済の成長と安定は、利益の多寡に比例する。
経済発展の鍵は、働く者一人当たりの投資を増大させることにある。投資が生産量と生産性を左右する。その投資を可能にするものが利益である。
利益なくして経済活動がありうるとすることと同じように、利益以外に経済活動の成否の尺度がありうるとすることは、ナンセンスである。
「利益とは経済合理性のことである。経済活動の評価において、経済合理性に勝るものがあるはずはない」(『企業とは何か』)