きょう(日本時間7月30日)MLB、シアトル・マリナーズのイチロー選手が日米通算3000安打を達成した。

 日本では、新聞・テレビを問わず、上を下への大騒ぎである。孤高を貫き、圧倒的な努力でもって、全米にその実力を示したイチロー選手。確かに、彼の実績が賞賛に値しないはずがない。

 イチロー選手の「偉業」を速報で流した民放があれば、NHKも通常のニュース枠の中で彼の特集を組んだ。新聞各紙は異例の大きさで扱い、スポーツ面ではイチロー選手の軌跡を追う特集記事を掲載した。

〈プロ17年目のイチローは、日本での1278本(9年)に大リーグで1722本(8年目)を積み重ね、通算2175試合(日本951試合)目、34歳9ヵ月余りでの到達。単純に比較はできないが、張本の2618試合、39歳を大幅に更新した。メジャーに換算すると、同じ34歳で到達したタイ・カッブ(元タイガースなど)の2135試合に次ぐスピード記録となった〉(朝日新聞/7月30日付夕刊)
http://www.asahi.com/sports/bb/TKY200807300029.html

 伝説のタイ・カップ選手に次ぐ記録――。それならば、全米でもさぞかし盛り上がっていることだろう、と考えるのは当然のことである。

なぜイチローの3000本安打は
米国内で注目されないのか

 ところが蓋を開けてみれば、イチロー選手のこの「偉業」を取り上げる米メディアは皆無であった。ニューヨークタイムズ、ワシントンポストなどは一文字すら触れていない。これは一体どうしたことだろう。実はそれにはれっきとした理由があるのだ。

 まず3000安打という記録そのものだが、日本では張本勲氏以外に達成した選手はいないが、MLBでは過去に27人もの選手が到達している。

 つまり、3000安打そのものは、MLBではそれほど珍しい記録ではないのである。付け加えるならば、MLB最多安打のピート・ローズ選手の4265安打という記録からすれば、イチロー選手のそれが見劣りするのは否めない。

 だが、何よりも全米で報道されない最大の理由は、イチロー選手の3000安打を、米国のメディア、記者たちの誰一人認めていないということに尽きる。

 イチロー選手がMLBに登場した2001年を思い出して欲しい。MVP、首位打者、盗塁王などのタイトルを総なめにした。その際に論争になったのが、アメリカン・リーグの新人賞を、すでに日本で活躍したプロ選手に与えるかどうかだという議論だ。