どうしていま、クルマ関連でイスラエル?
水面下で進む、将来有望株の“青田買い”

 今回のイスラエル初訪問の理由は、イスラエルのスタートアップの実情を追うためだ。スタートアップとは米語で、日本でいうベンチャー企業と同義である。

 近年、イスラエルで誕生したスタートアップがグーグル、アップル、アマゾン、マイクロソフト等、IT大手に買収されることが多い。代表的な事例は、2013年にグーグルがカーナビ用の地図情報サービス企業Waze(ウェイズ)を10億ドル(一部報道による、1ドル123円換算で約1230億円)以上で、また楽天が2014年にSNSと通信関連のViberを9億ドル(約1107億円)で買収した。

 そうしたなか、Waze以外にも自動車関連のスタートアップが続々と生まれている。

 だが、なぜいま、自動車関連なのか?

 そうした自動車関連スタートアップになぜ、日系メーカーが接触しようとしているのか?

 そして、そもそもなぜ、優秀なスタートアップがイスラエルで生まれるのか?

 今回の取材では、1週間の滞在中に8ヵ所、合計13の会社や事務所を訪問し、様々な「なぜ?」の真相を追った。具体的な内容は、日経BP社の日経Automotiveの連載アジアントレンド、また月刊・事業構想等、各種媒体で今後掲載する予定だが、本稿ではその概要について触れたい。

 以下、項目別に箇条書きとする。

(1)イスラエルで優秀なスタートアップが生まれる理由

・社会背景として、石油、天然ガス等の資源がなく、大規模な製造拠点もない。必然的に、経済発展のドライバーは研究開発が主体となる。

なぜいま自動車産業界でイスラエル企業が注目されているのか?テルアビブ大学内にある自動車関連スタートアップのインキュベーター、ECOMOTION。補助金を受けた6社が創業初期の6ヵ月間、オフィスとして利用可能 Photo by Kenji Momota

・研究開発では、ソフトウエア、医薬品の分野が多く、そうした領域では先端技術に挑戦するスタートアップが活躍しやすい。

・義務教育で、コンピュータ言語のC++等によるプログラミングを履修している。

・政府が大学と連携した、スタートアップ育成プログラムに積極的。

・人を紹介し合う文化があり、ひとつのプロジェクトに対して、早期に有望な人を集めることができる場合がある。