日本にとって距離的にも心理的にも遠い国、イスラエル。だが、最先端技術を有するスタートアップ企業を輩出する「発明大国」であることは世界で認知されており、アップル、インテル、グーグルなど米ハイテク企業の多くがイスラエルに研究開発拠点を置く。韓国のサムスンも既に10年前に進出している。日本企業にも最近ようやく動きが出始めた、イスラエル技術を取り込む方策を、イスラテック・加藤スティーブ氏が提言する。
「スタートアップの技術を取り込みたい」大手企業、
「技術を売りたい」スタートアップ
イスラエルと聞いて「戦争」というイメージを抱くのが日本人一般の感覚だろうか。こうしたイメージが強い中、イスラエルは欧米各国では、「中東のシリコンバレー」と呼ばれ、「イノベーション」が生まれてくる国として定評がある。
「イノベーション」の源泉は、スタートアップ(「ベンチャー企業」という呼び方もあるが、本稿では、スタートアップで統一)であろう。イスラエルは、年間400社以上ハイテクスタートアップが設立されるスタートアップ大国(Start-Up Nation)。「ファイヤーウォール」のCheckPoint Software Technologies社、「PHP」のZend Technologies社、Microsoft社のジェスチャー入力装置「Kinect」向けの画像センサなどを提供するPrimeSense社など、過去成功しているスタートアップは数多い。
その一方、米国を中心としたエレクトロニクス企業Apple社、Google社、Microsoft社、Intel社、CiscoSystems社などの企業のR&D(研究・開発)機関が100拠点以上、人口わずか770万人、四国程度の広さに集結する。大手のエレクトロニクス企業は、「スタートアップの技術を取り込みたい」。一方で、スタートアップは、「技術を大手企業に売り込みたい」、両者の思惑が一致する。
「イノベーション」は、スタートアップから生まれることが多い。大手のエレクトロニクス企業にとっても、次の「イノベーション」が、スタートアップから生まれてくるとなると、イスラエルはやはり、無視できない。大手のエレクトロニクス企業が、R&D(研究・開発)拠点を設ける理由には十分で、場合によっては、こうしたスタートアップ企業を、いち早く買収してしまう目的も当然ある(2012年のイスラエルのM&A総額は、9700億円)。