「合法的に誰かが金を貸してくれるスレ」「少額(10万円以内)だから貸すよ」……。

 これらはインターネットの掲示板「2ちゃんねる」に立てられた、おカネの貸し借りに関する膨大なスレッドの一部である。

 もともと2000年にクレジットカードの情報交換の場としてできたが、03年頃から多重債務や自己破産の相談、過払い金返還請求など消費者金融関連の内容が増え始め、05年春に「借金生活板」として分離独立した。その後、スレッドが増殖を続ける一方で、並行して始まったのが、“個人間での金銭貸借”である。

 「グレーだが、一応のルールにのっとっている」と言うのは、ネット上での個人間融資を研究している藤原七重・敬愛大学准教授だ。

 そのルールとは、収入や借金の額、借り入れ希望額など数十項目を決められた様式に書き込むこと、また「トリップ」「フシアナ」と呼ばれる個人証明機能の使用が借り入れの要件となっている。そして書かれた内容を見た“神”と呼ばれる金主などが、アドバイスをしたり、おカネを貸し出すのだ。その際の貸出金利は、出資法の上限金利(個人間では109.5%)以下が大半である。

 だが、「昨年春頃から異変が起き始めた。急激に金銭貸借が成立しにくくなっている」と藤原准教授は言う。その理由は「おカネを借りた人が返済しないケースや、暴言などで借り手を攻撃するような書き込みが急激に増えたことではないか」と分析する。

 加えて、「ヤミ金」と見られる書き込みが急増しているという。先のルールを無視し、いきなり「おカネを貸します」と書き込むケースが増えているのだ。なかには安易に連絡を取ってしまう資金需要者もいるようで、法外な金利を取られている可能性も高い。

 上限金利引き下げに伴う与信厳格化によって、おカネを借りられなくなった資金需要者が増えている。このままでは2ちゃんねるに流れ込み、ヤミ金の格好の標的になりかねない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 藤田章夫)