そして、テイク15。ドラムとベースが刻むリズムとテンポ、オルガン、ピアノ、ギターが生む鋭角的で硬質なサウンドにディランのハーモニカが彩りを加えます。そして、虚飾を削いだ言葉が告発する人間の弱さと希望を最高の声で歌いきります。もうこれ以上何度やっても、二度とそんな演奏はできないと誰もが直感した瞬間でした。

 その後は、8月4日まで残りの楽曲の録音を断続的に続け、「追憶のハイウェー61」(写真)が完成します。冒頭“ライク・ア・ローリング・ストーン”から始まり、10分超の大作“廃墟の街”まで全9曲、今に至るディランの40枚を超えるアルバム群の中でも最高傑作に仕上がりました。

 特に、“ライク・ア・ローリング・ストーン”は、ローリング・ストーン誌『オール・タイム・グレイテス・ソング500』で堂々の1位となるロック史の金字塔でもあります。

本人不在であの名曲が誕生!?

◆サウンド・オブ・サイレンス

 コロンビアレコードが誇るフォークロック系アーティストは多数いますが、サイモン&ガーファンクル(S&G)は別格です。その代表曲は、全米チャート1位を獲得し、映画「卒業」(写真右)の冒頭にも流れた“サウンド・オブ・サイレンス”。もちろん、この大ヒット曲もコロンビア30丁目スタジオで録音されています。そして、名曲に相応しいちょっとしたドラマがあります。

 話が長くなるので簡潔に。S&Gのデビュー・アルバムは1964年録音の「水曜の朝午前3時」(写真左)です。今聴いても素敵なアコースティック・サウンドで上質のフォーク音楽です。

 しかし、発表当時は全く売れず、S&Gは実質解散。このアルバムも忘却の彼方へ消えそうでしたが、この音盤収録の“サウンド・オブ・サイレンス”の潜在力に目をつけたのが上述の天才プロデューサー、トム・ウィルソンです。

 ウィルソンは、この曲には、旋律と詩とハーモニーの持つ強力な磁場がありながら、生ギターだけの伴奏ではインパクトに欠けると見抜きます。そこで、ドラム、ベース、エレキギター、オルガンを加えてロック化して、この曲本来のチカラを聴衆に伝達しようと決意します。この時、ガーファンクルはコロンビア大学の建築大学院に在学しており、サイモンは英国で音楽武者修行中。2人に連絡もつかず、独断でロック化に踏み切ったのです。