終の棲家とするのか、新しい人生のスタート地点とするのか。思いはそれぞれなれど、満足のいく家を建てたいというのは多くの人の望みだ。ダイヤモンドQ編集部が厳選した住まいを訪ねて、満足のいく家を建てるためのヒントを探してみよう。
建築家が建てる究極の家(1)
梁のある伝統工法の家
吹き抜けの居間から見上げると、2階のロフトを支え東西に通貫する太い梁木が目に入る。その梁木を支える無数の柱が壁の中で家屋全体を支えているのだ。南側に面した吹き抜けの居間からは、ダイニングとキッチンが見える。どの位置にいても窓から外の風景を眺めることができる。ひとしきり弾んだ会話の合間を埋めてくれる格好の一幅となる。日本家屋の伝統的な工法をかたくなに守り続ける「住まい塾」の仕事である。
この家の主も、戦後一変した日本の住まいのモジュールになじめずにいた。布団をしまおうとしても押し入れには収まり切らず、同じ6畳の和室でもどこか窮屈さを感じていた。身体になじんだ間尺を受け止めてくれる家を探していたのである。
客間についても、壁は塗り壁で左官の手業の跡が独特の風合いを生み出している。畳も丸畳(191×95.5cm)でゆとりを感じさせてくれるものにした。
守り続けてきたのは工法だけではない。例えば、夕食の準備に立つキッチンの窓から見える夕暮れに染まる空の色、家事の合間、縁側に座して望む四季の庭の移ろい……。住まいの安定感は住まう人へ安心感をもたらし、日々の暮らしを充実へと導いてくれるのである。