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●古都奈良の文化財(奈良県/1998年登録/世界文化遺産)
奈良時代の74年間、平城京として栄えた奈良。その短い期間にも大陸の影響を受けながら花開いた日本独自の文化は、奈良に残されている数々の寺社や文化財に見てとれる。構成資産として登録されたのは東大寺、興福寺、春日大社、春日山原始林、元興寺、薬師寺、唐招提寺、平城京跡の8件。奈良を代表する文化財である東大寺の本尊、通称「奈良の大仏」こと盧舎那仏は、間近に見てみるとやはりオーラが違う。個人的には、興福寺の国宝館に所蔵されている国宝・乾漆八部衆立像のなかでも有名な阿修羅像は見逃せない。
●日光の社寺(栃木県/1999年登録/世界文化遺産)
8世紀後半、勝道上人によって開山され、以来山岳信仰の霊山として祀られてきた男体山(二荒山)。勝道上人が建立したと言われる二荒山神社と輪王寺をはじめ山中に多くの社寺が建てられ、神聖な場所として崇められてきた。
さらに江戸時代、初代将軍家康を祀るため「日光東照宮」が造営されたことで、日光は独自の発展を遂げる。豪華絢爛な東照宮陽明門は、残念ながら2019年(予定)まで修理中。しかし「見ざる・言わざる・聞かざる」で有名な東照宮神厩舎の「三猿」や、輪王寺大猷院など極彩色に彩られた建造物は、色濃い樹々の緑にも負けない独特の景観を造り出している。
日本にいながら感じる大陸の風
エキゾチックな色彩感覚や意匠
●琉球王国のグスク及び関連遺産群(沖縄県/2000年登録/世界文化遺産)
1429年から1879年にかけての450年間、今の沖縄に存在した琉球王国。その独自文化の痕跡を示す今帰仁城跡、座喜味城跡、勝連城跡、中城城跡、首里城跡、園比屋武御嶽石門、玉陵、識名園、斎場御嶽の9件が構成遺産として登録されている。
「グスク」とは、本土で言うところの城塞建築と考えられているが、詳細はいまだ不明。琉球王国の王城だった首里城は、戦前までは正殿などが国宝となっていたが、戦火により破壊された。今は当時の建造物が再現されており、その色彩感覚や意匠には日本とも異なる大陸の影響が見てとれる。斎場御嶽は歴代の国王も参拝した聖地と考えられており、訪れればその静謐さに背筋が伸びるはずだ。
●紀伊山地の霊場と参詣道(三重県・奈良県・和歌山県/2004年登録/世界文化遺産)
本州最南端である紀伊半島の多くを占める紀伊山地は、標高約1000メートルから2000メートル級の山々が連なり、古くから山岳信仰の対象とされてきた。修験道の拠点とされる「吉野・大峯」、熊野信仰の総本山「熊野三山」、空海が開いた真言宗の道場「高野山」という3つの霊場と、それに至るまでの参詣道などが登録されている。日本特有である神仏習合の思想が社殿にも色濃く見られ、また畏怖の念にも似た霊山への厚い信仰から、今でも豊かな自然景観を残している。