二世帯住宅は、二世帯でローンを返済するので資金負担が少なく、光熱費も抑制できるメリットがあり、都市部では一定の人気がある。子育てを手伝ってもらえるのも大きなポイントだ。そんなお得感ばかりに気を取られると、重大な落とし穴に気が付かないかもしれない。 

 二世帯住宅には多くのメリットがある。親と子でお金を出し合えば、建設コスト負担は減少。生活空間を共有することで、エネルギー消費量も抑制できる。共働き夫婦なら、育児を両親に手伝ってもらえる。近年、最も注目を浴びているのは相続税対策上の利点だという。

「2013年の相続税法改正により、『小規模宅地等の特例』に関する二世帯住宅の要件が緩和され、完全分離型にも適用されるようになった」

 こう話すのは、相続税対策込みの不動産コンサルティングを得意とするコア・リサーチ(東京都渋谷区)の大森裕次取締役。「小規模宅地等の特例」とは、条件を満たせば330平方㍍の広さまで土地の評価額を80%引き下げられる制度。14年からあらゆる二世帯住宅に適用された。

 評価額1000万円の土地が200万円に減額されるのだから、節税効果は相当なもの。

 だが、二世帯住宅には一般の一戸建て住宅とは異なり、大きなデメリットがある。「水回りや玄関が複数ある二世帯住宅の需要は非常に小さく、買い手が付きにくい」(賃貸住宅のリノベーションを手掛けるハプティックの小倉弘之社長)のだ。

 そのため、二世帯住宅が相続トラブルの火種となる可能性も。1階に親、2階に子が住む〝よくある〟共有型の二世帯住宅を考えてみよう。この場合、同居する子以外に相続人がいても、家を分割することは不可能。代償相続できる現金がなければ、当然、相続争いは避けられない。処分して分け合おうにも、二束三文にしかならない可能性がある。