人民元の切り下げは中国の輸出企業にとってはプラスに作用するが、輸入価格の上昇を通じて内需系企業や公共投資にはマイナスに作用する。中国に輸出を行っている東南アジアの新興諸国も、中国製品との先進国市場での競合や、中国への輸出減少の影響を受けることになるだろう。現時点で市場が期待していたのは内需拡大策の実行であり、中国企業による外需の奪取ではないことから、商品価格にとってはマイナス面が強調された形となった。

カカオ豆、綿花など
それでも上昇している商品も

 この状況でも年初来騰落率がプラスになっている商品がある。弊社が重要と考えてウォッチしている国際商品42品目の中で年初来の上昇率がプラスなのは、本稿執筆時点で米国ガソリン、欧米ココア(カカオ豆)、シカゴ綿花、シカゴ牛乳(チェダーチーズ向け)、シカゴもみ米の6品目で、需給ファンダメンタルズ(需要と供給のバランス)が相対的にタイト、あるいは昨年後半から年初にかけての下落が顕著でその反動が出ている商品だ(下の図参照)。

出所:市場データを元にマーケット・リスク・アドバイザリー作成 拡大画像表示

 少し個別に見てみると、米国ガソリン(日本国内のガソリン価格とは異なる)の価格上昇は、米景気回復や価格下落による需要増加によって国内需給がタイト目であったこともあるが、昨年後半の下落幅が大きかったことの反動面がより強い。しかし原油価格の下落は当然ガソリン価格にもマイナスに作用すること、これから秋にかけて米国は不需要期に向かうため需要の鈍化が予想されることから、今後は水準を切り下げる動きになると予想される。

 チョコレートに用いられるカカオ豆も需給のタイト感が価格を押し上げている。これは価格が下がりすぎたというよりは、需給ファンダメンタルズの強さが影響した。

 需要面では中国の経済規模拡大に伴うアジアの需要増加の影響が大きい。国際ココア機関の調査では、2015年のカカオ豆の生産量と摩砕需要は2000年対比で生産量が35.5%の増加、摩砕量が40.7%の増加となっている。これはカカオの生育には年単位の時間がかかること、大規模生産に向かない農産品であること、カカオ豆を原料に作られるチョコレートは嗜好性の強い商品であり、新興国経済規模拡大の影響を受けたことによるものだ。