胸に迫る
介護記録映画

 介護映画の第3類型となるのが記録映画である。作り事ではない生の実態が浮き彫りになる。

「毎日がアルツハイマー」とその続編「毎日がアルツハイマー2」が傑出している。認知症を抱えながら家の中で暮らす母親。カメラを手にした同居する娘が、その日常生活をどこまでも執拗に追いかける。

 その娘、関口裕加さんは監督も兼ねる。手作りそのものの相当な異色作だ。母親が認知症になったため、長年の豪州滞在を打ち切って急きょ帰国、カメラを手にして監督になってしまった。

 散らかった家の中が丸見えである。当たり前の日々の生活をこれでもかと映し出す。母親が「うるさい」とカメラに向かってどなる。息子や姪も自然に画面に登場する。

 大変な家庭生活なのに、絶えず笑いが起きる。普通の人間が普通の口調で話し、生活を送る。画面が正直にその動きを掬い上げる。認知症をありのままに皆で受け入れている様子が実によく分かる。

「笑いで母を包んであげようとした」と関口さん。

 2年半もカメラを回し続け記録したのが「毎日がアルツハイマー」。YouTubeに載せて話題になり、2012年から劇場公開を始めた。

 関口さんは、認知症について調べ出し、専門家に会いに行き話を聞いて回った。専門医から「お母さんは認知症になって苦しんでいる。認知症だから閉じ籠っているのでなく、自分で選んで閉じ籠っているのです」と説明されて、母親の目線で見るようになった。

 パーソン・センタード・ケア(本人を尊重するケア)という欧州で浸透しているケア手法を知ると、すぐに英国に出かける。英国で研修を受ける姿をそのままカメラにおさめたのが続編の「毎日がアルツハイマー2」である。2014年に公開された。

 家族ができることを存分に発揮している。それも実写だから場面の一つ一つが胸に迫ってくる。家族介護に追われる人たちには必見の画像である。これまでの「介護映画」の俳優たちの演技が空々しく思えてしまうほどの面白さがあり、誰しもが我がことのように考えさせられる。

 最後に昨年公開されたばかりのちょっと毛色の違う映画にも触れておかねばならない。米国映画「パーソナル・ソング」である。

 思い入れのある曲を聴くことで、認知症の人がその音楽に親しんでいた当時の生活の記憶を蘇らせるというドキュメント作品である。

 施設に入居している94歳の黒人男性にゴスペルの名曲「ゴーイン・アップ・ヨンダー」を聴かせた途端、若い頃を思い出し自転車好きだったことなどを話し出す。そうした効果が次々実証される。

 音楽が脳の広い部分を刺激し、眠っていた心を呼び戻すと言う。ボディタッチが良いと言われるが、脳の奥には手でなく音楽で触れる。医学的にきちんと立証されてはいないが、なんとなく理解できる。実践してみたい気になるのは確かだ。