「赤字でも必ず1ヵ月分のボーナスを出す」
さらに今から4年ほど前、まだ採算が合わない頃に、私が「従業員がいつも一生懸命努力してくれるので、ボーナスを出す」と言い、アメリカの幹部社員たち皆から反対されたことがありました。
『稲盛和夫オフィシャルサイト』
彼らは、「社長は日本と同じように考え、ボーナスを出せば、社員が会社をもっと好きになってくれて、もっと長く働いてくれるだろうと考えているのでしょう。
しかし、アメリカ人はそうではありません。そんなことをしてあげたとしても、隣の会社のほうが少しでも給料が高ければ、簡単にやめていくのです。そんな無駄なことをするくらいなら、われわれ経営幹部にボーナスをください」と言うのです。
私は、「あなたたちにボーナスを出すのが、かえって惜しいくらいだ」と言って、赤字のときでも決算期には必ず1ヵ月分のボーナスを出し、業績がよくなればさらに増やす約束をしました。
従業員は、最初「信じられない、うそではないのか。本当にくれるのか。なぜくれるのか、意味がわからない」と驚いていました。それでも私は、「今は私のすることの意味がわかってもらえないとしても、必ず後でわかってくれるだろう」と信じ、ボーナスを出していきました。
その結果、今では誰も、「違う人種に使われる」というコンプレックスをもっていません。そのようなこともあって、アメリカの工場も非常に順調にいくようになりました。
今では、100億円の売上で24億円もの利益が出るという、すばらしい工場に発展しています。これもひとえに、私が方法論に頼った経営ではなく、本質、つまり「人間そのもの」に判断基準を置いた経営を行ってきたためであると思っています。
(最終回へ)