十分な自信を持つことは、すべての人にとって欠かせない能力です。しかし、自分に自信が持てない人が増えています。自信に欠けると、仕事もキャリアも前に進まず、停滞してしまいます。では、どうすれば成功のための自信を手に入れられるのか? その答えは、最近注目を集める「レジリエンス」にあります。本連載では、『なぜ、一流になる人は「根拠なき自信」を持っているのか?』を上梓したレジリエンス研究の第一人者である久世浩司氏が、最短最速で自信をつけるための思考と習慣ついてお伝えします。第2回のテーマは、「根拠なき自信」を形成する3つの心理的資源とは何か、です。
夢と「根拠なき自信」をもとに
巨大企業を築いた孫正義氏
ソフトバンクの創業者である孫正義さんは、根拠のない自信を基盤としながら成功し続けている著名な経営者であると言えます。
孫さんは、創業当初に「最初にあったのは夢と根拠のない自信だけ。そこからすべてがはじまった」という言葉を残しています。
実際、ソフトバンクの成長の節目には、孫さんが「根拠なき自信」を発揮した意思決定が数多くなされていました。
例えば、孫さんは、24歳でパソコンの卸売業「日本ソフトバンク」を設立するのですが、起業資金として1億円の融資を申し込んだところ、銀行(第一勧業銀行)から断られてしまいます。
ところがそこで諦めずに、かねてから懇意にしていたシャープ副社長の佐々木正氏に融資の後ろだてを依頼することになりました。
「僕は何とかしてビジネスを立ち上げたい。佐々木さん、融資の保証人になってもらうことはできないでしょうか」と言ったそうです。根拠のない自信がなければできない芸当です。
さらに、孫さんの「根拠なき自信」は、その先を見通す力と相まって、ソフトバンクをベンチャー企業から大企業へと成長させる原動力となりました。
初期のソフトバンクの飛躍に、ワープロソフト「一太郎」を扱ったことがありました。徳島に住む若い夫婦が自分たちが開発したこのソフトをソフトバンクに売り込んできたのです。そのときのことをソフトバンクOBはこう述べています。
「孫さんには先見の明がありましたね。すぐに『これは売れる』と判断して、二つ返事で卸を引き受けたんです。孫さんは『一太郎を絶対に日本一のソフトにする』と意気込んでいました。案の定、『一太郎』は爆発的なヒット商品となりました」
「絶対に日本一に」という言葉から、孫さんの自信が感じられます。そして実際に、それを達成してしまうのがすごいところです。