根拠なき自信家に共通する
「自己効力感」「自己肯定感」「失敗許容力」

 ここまでは「根拠なき自信」の持ち主の代表格として、孫正義さんの例を挙げました。孫さんは、自信過剰とも思われる発言を繰り返しながら、次々と目標を成し遂げ、その有言実行ぶりが世間の尊敬を集めています。

 また、根拠なき自信は持ちつつも、横柄な態度を示さないのも特徴のひとつと言えます。つまり「自信」と「謙虚さ」のバランスが取れているのです。ただの自信家は敵を作りますが、謙虚な人は自分の失敗を潔く認め、傲慢にならないため、味方を作ることに長けています。

 多くの人から支持と人気を集める理由は、自信と謙虚さの絶妙なバランスを維持しているからでしょう。ただ、一般人と違うのは、孫正義さんは「根拠なき自信」を支える心理的資源を備えていることです。

 心理学における自信の研究をひも解くと、それらの心理的資源には、主に以下の3つがあると考えられます。これは私の専門であるレジリエンスとも深く関連する要素です。

(1)価値ある目標を達成できると自分を信じる「自己効力感」
(2)失敗しても自己否定せずに自分の価値を信じる「自己肯定感」
(3)失敗を恐れずにチャレンジし続けることができる「失敗許容力」

 

「根拠なき自信」を生み出す3つの心理的資源

 

 なかには、生まれながらにして、これらの心理的資源を持っている人もいるでしょう。例えば、サッカーの本田圭祐選手は、小学校の卒業文集で、以下のような将来の目標を掲げていました。

(1)ワールドカップに出場する。
(2)ワールドカップで有名になり、ヨーロッパのセリエAに入団する。
(3)セリエAのチームでレギュラーになって10番で活躍する。
(4)40億円の年俸を得る。
(5)ワールドカップでブラジルと決勝を戦い、自分が得点し2対1で勝つ。
(6)世界一のサッカー選手になる。
(7)大金持ちになって、親孝行する。

 このように本田選手は、小学生の頃から「根拠なき自信」を発揮していました。「自己効力感」や「自己肯定感」が高いレベルで備わっていたと思われます。

 しかしながら、「根拠なき自信」を身につけるのは、大人になってからでも決して遅くはありません。もがき苦しむような大きな苦労をする必要もありません。これらの心理的資源を、体の筋肉を鍛えるように、「心の筋肉」として意識的に鍛錬すればいいのです。