大量に越水すれば、その水が堤防を駆け下るときに周囲を削り取って、堤防を破壊する(=越水破堤)ことは、東日本大震災のときの大きな教訓だったというのに。

 それほどまでに洪水という災害は過小評価されていました。「鬼怒」川のほとりで。

でも問題はこれからです。この常総市での悲劇や失敗を、次への学び・防災・減災につなげられるか、が勝負なのです。

想定外の災害にどう備えるのか。ハードよりソフト

 これからの100年、気象学の専門家が指摘するのは、「スーパー台風」などによる水害の激化です。豪雨や高潮による被害が、頻発するようになるだろう、ということです。

 横浜市の新市庁舎(2020年1月竣工予定)は基本構想の中でこう謳っています。

 ・浸水可能性はある。南海トラフ巨大地震による最大1.2m程度(のみ)
 ・電気・機械室や危機管理センター(*5)・非常用電源は、市庁舎の中層部に配置
 ・設備システムの系統を浸水深以上の階と以下の階で分離し、システム全体の機能停止を防止

 きっとハード面ではこういった話なのでしょう。でもいくらハードにお金をかけようと、先般の社会保険業務センターでの情報漏洩事件に見られるように、ソフト面がいい加減ならこれも穴だらけの長城と化すでしょう。

 全国自治体の職員のみなさん、浸水時間の想定(*6)は大丈夫でしょうか?常総市では平地に広く浸水したために排水効率が悪く、想定外に時間がかかっています。頼みの排水路も土砂や瓦礫で埋まって使い物になりませんでした。

設備システム系統の分離はされていますか? さすがに「1階の冠水テスト」などはやれないでしょう。分離したはずが、どこかでつながったり、同じ電源を頼りにしたりはしていませんか。

1階にダイジなものは置いてありませんか?電気・機械室などを中層階に上げたとしても、ダイジな書類やデータや鍵やハンコの類が実は1階に置いてあったら台無しです。特に鍵は要注意。パスワード類も同じです。いざというとき本人がいないとシステムが動かないでは洒落になりません。

実行可能な対応マニュアルになっていますか?ソフト面を充実させすぎて、原子力発電所の危機対応マニュアルみたいになってしまったら、実行自体が怪しくなります。

合併特例債による市庁舎改築ラッシュの果てに

 ここ数年、全国で雨後のタケノコのように自治体の新庁舎がつくられています。いわゆる「合併特例債」の威力です。

 政府は市町村合併の促進剤として「新庁舎建設には平方メートルあたり22万円分まで、政府がその約70%を負担(*7)する」というアメをばらまきました。老朽化した庁舎を抱えた多くの自治体がこれに飛びつきました。

 期間限定のハズだったこの合併特例債は、その後要件が緩和された(建設単価平方メートルあたり40万円までOK)上で、震災後の「国土強靱化」に乗って期間も延長されました。「これは得だ」と財務基盤の弱い中小自治体が新庁舎建設へと動きました。

常総市役所の衝撃!<br />自治体の新築庁舎は本当に頼れる防災拠点か?出所:各自治体データより三谷作成

*5 災害発生時には、災害対策本部になる。
*6 横浜市では20分と見積もっている。
*7 事業費の95%まで起債してよく、その返済の70%を政府が負担する。