入山章栄氏の対談連載「日本のブルー・オーシャン企業」。第4回は、料理をする女性を中心に、日本で月間延べ5,500万人が利用する日本最大のレシピサイトを運営するクックパッドの穐田誉輝代表執行役に話を伺う。元々は「価格.com」や「食べログ」の経営を行っていた穐田氏だが、2007年にクックパッド社外取締役に就任すると、2012年に創業者の佐野陽光氏から代表の座を引き継いだ。以来、同社はさらに大胆な事業展開を進め、海外展開も進めている 。誰もが知る超人気料理サイトは、今後どのように変貌するのか?対談後編は、穐田氏に事業の見通しや、海外展開について訊いた。
盤石な地位を築いたとは思っていない
入山章栄(以下:入山) ブルー・オーシャン事業の定義の一つは、「新しい価値創造モデルを作り、新しい顧客を開拓することで、同業他社が追いつけないような状況を築き上げる」ことです。その意味では、料理レシピサイトが乱立する中で圧勝しているクックパッドさんは、それに当てはまるのではないか思うのですが。
穐田誉輝(以下:穐田) でも、今だけかもしれないですからね。
クックパッド株式会社 代表執行役兼取締役
株式会社ジャフコ入社。株式会社カカクコム代表取締役を経て、2007年よりクックパッド株式会社取締役(現任)。2012年より同社代表執行役(現任)。
入山 楽観はしていない?
穐田 むしろ、「もっと便利なものが出てきたら、なくなる」と思ってます。Facebookの料理投稿で充分とか、YouTubeの料理動画で良いじゃんとなれば、それでお終いです。
入山 なるほど。Facebookとかが意外と競合になってくるかも、という危機感があるんですね。
穐田 それが普通だと思いますけどね。もっと便利なものがあれば、私もそっちを使います、っていうだけの話です。SNSもソーシャルゲームも、プレーヤーの入れ替わりがすごく激しい。一気に過去の企業になるところも多い。明日は我が身ですよ。そのうち「昔は、入山さんに取材に来てもらったんだよねえ」みたいになるかもしれません(笑)。
入山 私は、いわゆるオールドエコノミーの大手企業の方とも、穐田さんのようなベンチャー経営者ともお会いできる機会が多いのですが、ITとかネット業界の変化のスピードに対する感覚は、他の日本のオールドエコノミーの業界とは、もうとてつもなく違いますよね。とにかく感覚が全然違うんですよ。ぶっちゃけた話、ブルー・オーシャンとかレッド・オーシャンっていうのは、けっこうオールドエコノミーの人に受けやすいんです。だけどベンチャー業界の方だと、「そんな変化、普通だよ」っていう感じに捉えられてますね。