増え続ける空き家

よねやま・ひでたか
1963年生まれ。1989年筑波大学大学院経営・政策科学研究科修了。野村総合研究所、富士総合研究所を経て現職。慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員などを歴任。専門は住宅・土地政策、日本経済。著書に『空き家急増の真実』(日本経済新聞出版社、2012年)、『少子高齢化時代の住宅市場』(日本経済新聞出版社、2011年)ほか多数。

 空き家問題は今や地方のみならず、全国的な課題となっている。空き家対策特措法が成立したことで、2015年は国、自治体とも空き家対策により本格的に取り組んでいくことが求められる。

 2013年の日本の空き家数は820万戸、空き家率は13.5%と過去最高を記録した。

 空き家には、「売却用」、「賃貸用」「二次的住宅(別荘等)」、「その他」の4つの類型がある。このうち特に問題となるのは、空き家になったにもかかわらず、買い手や借り手を募集しているわけではなく、そのまま置かれている状態の「その他」の空き家である。

 たとえば、親の死亡後、そのままにしておくケースがこれに当たる。住まなくても維持管理を行っていれば問題はないが、放置期間が長引くと倒壊したり、不審者侵入や放火、不法投棄の危険性が増すなど周囲に悪影響を及ぼす“問題空き家”となる。空き家全体に占める「その他」の空き家の割合は、2008年の35%から2013年には39%にまで高まった。

 一方、「その他」の空き家率(「その他」の空き家/総住宅数)は5.3%と、これも5年前(4.7%)に比べ上昇した。都道府県別では、鹿児島(11.0%)、高知(10.6%)など過疎で悩む県が上位となっている。

 これに対し都市部では低く、一番低いのは東京(2.1%)となっている。ただ、この割合が低い都市部で問題がないというわけではない。都市部では住宅が密集しているため、“問題空き家”が1軒でもあると近隣への悪影響が大きいという問題がある。

 “問題空き家”となる予備軍が増加している背景には、(1)人口減少、(2)核家族化が進み親世代の空き家を子どもが引き継がない、(3)売却・賃貸化が望ましいが、質や立地面で問題のある物件は市場性が乏しい、(4)売却・賃貸化できない場合、撤去されるべきだが、更地にすると土地に対する固定資産税が最大6倍に上がるため、そのまま放置しておいた方が有利、などがある。