主演女優の二人が語る
この作品の魅力

 続いて、舞台オリジナルのキャラクターで悲惨な過去をもつ女性を演じる愛加あゆさんと、原作における「青年」に当たる役を演じる黒澤はるかさんにお話を伺いました。

愛加あゆさん

──愛加さんは1年前まで宝塚の娘役トップをつとめていらっしゃいました。それが今回はいわば汚れ役を演じられるわけですが、この大転換をどう受け止めていますか?

愛加あゆ(以下、愛加) 今回の舞台は私にとって初めてのストレートプレイです。これまで所属していた宝塚は、大劇場で夢の世界を求めて作り込まれるような舞台でした。ところが今回の『嫌われる勇気』は人間らしさやリアルをひたすら追求するものでまったく異なります。今までの癖を和田さんにいろいろ指摘していただき、これを機会にお芝居というものを一から学び直している感じです。当然厳しい部分も多いのですが、宝塚時代の愛加のイメージを良い意味で裏切れるようにというのを目標に頑張っています。

──黒澤さんは、人間関係とくに親子関係に悩んで利重さん演じる教授のもとに相談に行くという難しい役どころです。どんな役づくりを心がけていらっしゃいますか?

黒澤はるかさん

黒澤はるか(以下、黒澤) 私が演じるのは原作に出てくる「青年」に当たる役です。ですので、原作を読んだときに受けたイメージはもちろん、脚本における「木戸陽子」という役がどんなことを考えているのかを一つ一つ想像して演じています。色々な悩みを抱えつつも、ある種のエネルギッシュさを持っているというか、そういう部分をしっかり陽子として表現していこうと思っています。

──たしかに原作の「青年」は悩みを抱えつつも妙に熱いキャラクターですからね。それでは和田さんの脚本や演出についてお二人の感想を聞かせてください。

愛加 あの原作をこうしたサスペンス風の人間ドラマにされたというのは本当に面白いと感じています。和田さんは演技の問題点をさまざまに指摘してくださるんですが、それが解決できるまで長い時間を掛けて一緒に考えてくださいます。なので、自分に何が足りないのかを改めて考えさせられる稽古になっています。

黒澤 他の舞台ですと場面ごとに固めてどんどん作っていくことも多いんですが、和田さんの演出は本当に生でその場にいることを重視します。それさえできていれば、ある意味どんな方向に行ってもいいから、とにかく本当にその場に生きていてくれと。その意味で、全然アプローチの仕方が違いますね。