ある経済団体が定めた選考解禁日の8月1日以降、今年の就職活動スケジュールに対する批判的な声がメディアを賑やかしています。しかし、どんなスケジュールであろうとも、学生と企業は、それに正面から対峙し、真摯に活動を続けざるを得ません。
次の節目は、10月1日の内定解禁日。この日は多くの企業にとって、内定クロージング日でもあります。それまでに内々定という名目で実質上の内定を出していた企業が、正式に内定式に学生を招く日と化しているのです。一昔前の株主総会の集中日と同様、ほとんどの企業がこの日に内定式を行うでしょう。複数内定をとりつつ、モラトリアムしていた学生にとっては、嫌でも一つの企業に決めざるをえない日でもあります。
ただ、昨年までだと、4月に内定を取り、就職活動をクローズした学生にとっては、約1年間の内定時期がありました。これに対して、今年は半年のみ。しかも卒業間際の半年です。そこで今回は、短縮化した内定時期について、あらためて考えてみたいと思います。
2016年採用の2大懸念
「一皮むけない就活」「短すぎる内定期間」
私が今年の就職活動全般を見て、心配していることが2つあります。
1つは、就職活動で比較的、苦労せずに社会に出てくる学生が少なくないことです。
良し悪しは別として、学生にとって就職活動は一皮むける経験です。温室化された大学から社会に出るにあたって、就職活動の閉鎖性と理不尽さと曖昧さは、学生の成長には一定の役割を果たしてきたといえます。
本連載の第4回「「オレの頃は」的議論を超えて日本の採用を変えていこう」を参考にしていただければと思いますが、一昔前と比較して大学と社会のギャップは大きく開いています。
そのギャップを埋める役割を、ささやかながら担っていたのが理不尽な就職活動でした。そこを平易に潜り抜けられるようになれば、学生たちはギャップを乗り越える力を養えなくなるかもしれません。
もう1つは、内定時期が短くなったこと自体の弊害が出ないか、という点。
貴重な内定時期を学生側も企業の側もきちんとデザインしきれずに終わってしまうのではないかという懸念です。
内定時期は、学生にとって非常に重要な「トランジション(過渡期)」といえます。その過ごし方、対峙の仕方によって次のステップは大きく変わってきます。先に挙げたように、大学と社会のギャップが拡大すればするほど、社会に出てからの活動に及ぶ影響は大きくなるでしょう。