インド株式市場の勢いが顕著だ。SENSEX指数は、4月9日まで週間ベースで9週連続上昇。4月7日には一時、心理的な節目とされる1万8000を突破した。その後も反落と反発を繰り返しながら1万8000弱で推移し、約2年ぶりの高値圏となっている。
背景には、新興国のなかでもひときわ好調な経済の状況がある。2月の鉱工業生産指数は前年同月比15%増。耐久消費財の旺盛な需要がこれを押し上げており、2009年度(09年4月~10年3月)の自動車販売台数は、前年度比28%増で過去最高を記録した。好調を通り越して、“過熱”といってもよい状況だ。これから発表期に入る企業の決算も、好結果が相次ぐと予想される。
2月末に発表された政府予算案も材料となった。インド経済の“アキレス腱”である財政赤字の削減、中間所得層への減税などの内容が、投資家に高く評価された。
一方で、インド株式市場は昨年時点から割高感が指摘されており、PER22倍は割安とはいえない。またもう一つのアキレス腱であるインフレも懸念要素だ。2月の卸売物価指数(WPI)は前年同月比9.9%の上昇で、3月は2ケタとなることが確実視される。「食料価格の高騰は鈍化の兆しが見えており、ピークとなった08年夏の12~13%まではいかない」(折原豊水・新光総合研究所エコノミスト)と見られるが、インドの物価に大きく影響する原油価格の上昇はリスク要因だ。3月19日の0.25%緊急利上げに続き、4月中にも追加の利上げが予想され、株価の頭を抑える要因となっている。
にもかかわらず、市場を主導する外国機関投資家の買いは衰えない。3月の外国人投資家動向は、前述の緊急利上げをものともせず、大幅な買い越しとなった。「大きな外的ショックが加わらない限り、投資は容易には落ちない。今後1~2ヵ月のあいだに再度上値を試してもおかしくない」(折原エコノミスト)。
株価上昇の一方で、現時点では出来高は増えていない。「悪材料への反応が鈍く、投資家が浮かれている感がある反面で、目に見える過熱感もない。不気味な展開だ。このままボックス圏で推移するのか、熱狂が始まるのか、分岐点にある」(須貝信一・ネクストマーケット・リサーチ代表)。
同様の状況は、各国で見られる。須貝代表は、「リーマンショック後の一時的な“債券バブル”から、ゆっくりと株式に資金がシフトしている表れではないか」と見る。“静かなバブル”の進行に、注意を払う必要がありそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 河野拓郎)