「アベノミクス第二幕」の
掛け声に説得力はあるか

8月の鉱工業生産は予想外のマイナスに。2期連続マイナス成長の懸念も高まっている

 足元のわが国経済を、一言で表現すると“足踏み”が適切だ。個人消費の回復が遅れていたことに加えて、中国経済の減速の影響もあり輸出が低迷気味だ。8月の鉱工業生産指数は前月対比0.5%減と予想外のマイナスに落ち込んだ。

 日銀の9月の短期経済観測(短観)を見ても、大企業製造業の景況感は3四半期ぶりに悪化した。今年7~9月期のGDPも水面下に下落する可能性が高まる。それが現実になると、4~6月期に続いて2四半期連続でGDPがマイナス圏に沈むことになる。

 金融市場では、アベノミクスの最も目立った成果であった円安・株高に一服感が出ている。特に株式市場は、中国経済の減速懸念などの要因もあり不安定な展開が続く。市場関係者の一部からは、「アベノミクス相場は終わった」との声が出始めた。

 景気の減速に加えて、今夏の安保法制の採決などで安倍政権への支持率は低下気味だ。今後、さらに支持率が低下するようだと、「自民党にとって来年の参院選挙は厳しくなる」との見方も台頭している。

 安倍首相はそうした状況を打開するために、「アベノミクスは第二幕へと移行する」と宣言し、「新三本の矢」を唱え始めている。第一幕である程度の経済回復が実現できたので、これからの第二幕では、家計部門に恩恵が及ぶ政策運営を行うとの趣旨なのだろう。

 しかし、安倍首相の掛け声だけで支持率が回復するのは難しいだろう。足元の景況感は失速寸前で、美辞麗句を並べた掛け声の効果は大きくはないだろう。

 こじつけのような新三本の矢に説得力を見出す経済専門家は多くはない。安倍首相自身、足元の経済状況をもう一度よく検証することが必要だ。そうした検証がなく、ある日突然、「今度は第二幕だ」と言われても納得できる人は少ない。