改善した運用利回り
「日本経済新聞」(4月24日、朝刊)は「企業の年金費用縮小」と見出しを打って、企業年金の運用利回りが改善していることを報じている。企業年金は、年金資産が将来の年金給付に対して必要な水準を下回る「積み立て不足」を15年といった、ある程度の期間をかけて母体企業の負担で埋めてゆく仕組みを持っている。
サブプライム問題で世界の株価が下落し始めた2007年度、リーマンショック以後の金融危機でさらに運用環境が悪化した2008年度の連続する大幅な運用不振によって、多くの企業の企業年金は積み立て不足に陥っていて、毎年、この不足額を埋める状態にあった。これが「年金費用」として、毎期の収益を圧迫する要因になっていて、この負担が縮小したということだ。
格付け投資情報センター(R&I)が約130の企業年金を対象に集計した前期(2010年3月期)の運用利回りは約14%だという。三井化学、近畿日本鉄道、東芝などは20%程度の利回りを確保したようだ。
もっとも、上場企業の年金資産は、その前の期で約34兆円で約14兆の積み立て不足(必要額48兆円に対して3割近い積み立て不足)だから、積み立て不足の改善幅は約1割に過ぎないことになる。年金の担当者の気分は、「一息ついた」けれども「まだまだ、これから儲けないと困る」といったところだろう。
運用改善の要因は、世界の株価が回復したことが大きい。日本の企業年金は将来の支払いが日本円建てなので、日本株の組み入れが大きいが、日本の株価もそれなりに上昇した。年金基金が見るのは日経平均よりもTOPIX(東証株価指数)なので、こちらを見ると、2009年の3月末は773.66だったが、前期末(3月期決算の場合)になる2010年の3月末問題は978.81と約26.5%の上昇だった。
当面の関心は、これがどこまで続くかということになる。希望通りに儲かるとは限らないのが運用の世界だ。