「日本経済新聞」(3月9日付朝刊)に載ったアンケート調査によると、金融サービスの普及形態として、さまざまな商品を購入できる「金融スーパー」を望む人が49%、「金融ブティック」を望む人が22%、両者の併存を望む人が29%であったという。
金融スーパーを支持する主な理由は「商品・サービスが比べやすいから(63%)」ということだった。第2、第3の理由はそれぞれ「時間を節約したいから(40%強)」「有利な商品が見つかると思うから(20%強)」だという。
金融スーパーの選択理由として、筆者が納得できるのは2番目だけだ。「おカネ」よりも「時間」のほうが大切なら、確かに、金融スーパーで物事をすませるのが便利だ。しかし、A社の窓口一つで物事をすますのと、複数の金融機関を使うのとで、たとえば10万円の差がつくとしたら、それでも「金融スーパーA社」に一本化するほうがいいと思うだろうか。
たとえば1000万円の退職金のなかから300万円を株式、ないしは株式に投資する商品に回すとしよう。金融スーパーA社では(銀行、信託、生保、証券いずれでもありうる)、販売手数料が3%で信託報酬が年率1.5%程度の投資信託を勧められる可能性がある。個人年金保険(変額保険)なら、顧客が負担する手数料はもっと高くなる公算が大きい。他方、購入先が金融の「ブティック」になるとは限らないが、国内株式への投資ならたとえばノーロード(販売手数料がゼロ)で信託報酬が0.7%くらいのインデックス・ファンドを探すことは難しくない。初年度に払う手数料コストに10万円以上の差がついておかしくない。
スーパーで日用品を買うのであれば、同じ品目について複数ブランドの商品をその場で比較することができる。しかし、金融機関の店頭で金融商品を選ぶ場合、同一商品について異なる運用会社の商品を十分広い範囲で横比較して買うのが難しいことが多い。商品が、販売金融機関が選んだものに限られてしまうし、多くの商品が選ばれていても、手で触れるような具体的なモノがあるわけではないので、店頭で勧められるもの以外には関心が向きにくい。率直にいって、手数料が安くて顧客にとっていちばんいい商品が金融機関の窓口にわかりやすくラインナップされていることは稀だ。