実在の人物をモデルに、
起死回生のストーリーが展開

石原 高井さんの本はビジネス小説ということですが、あとがきを読むと、登場する企業や主人公のカフェのオーナーは実在の人物であると紹介していますね。

高井 実はそうなんです。本の中でカフェを経営する前芝洋介のモデルとなっているのは、CARITYが運営するビジネスモデル塾の塾生の一人で、札幌のスープカリー奥芝商店を経営する奥芝洋介さんです。また函館のハンバーガーショップのハッピーピエロは、実際には「ラッキーピエロ」というお店で、テレビにもよく登場する有名なお店です。ほかにも実在の企業の儲かっている仕組みを取り上げています。

石原 そうなんですね。この本のストーリーを簡単に説明すると?

高井 はい。つぶれかかったカフェを経営するオーナーのもとに、お客として主人公の遠山桜子が現れます。彼女は経営コンサルタントをしていて、カフェのオーナーは彼女から儲かっている企業の「儲ける仕組み」など、いろいろ話を聞く中で、経営というものをだんだん理解していくんです。

石原 舞台となるカフェはいつ潰れてもおかしくない状態で、儲けられないオーナーがこれからどうなっていくのかとドキドキハラハラしながら読みました。

高井 主人公はオーナーの自慢のカレーを食べたくて足を運ぶようになり、そこで彼との会話を楽しみながら少しずつ経営のノウハウを教えていきます。実際にビジネスとしてコンサルティングしているわけではないんです。話を重ねていく中でさまざまな気づきを与え、彼自身が自ら成長していくので、読者には感情移入して読んでいただければ嬉しいですね。

 表題である「400円のマグカップで4000万円のモノを売る方法」のほかにも、「はちみつ屋さんと、宝石店はどっちが儲けたのか」という話など、いろいろな事例をあげています。

石原 はちみつと宝石…それはどっちなんですか?

高井 実は、はちみつ屋さんです。「はちみつ」と、宝石店が売っていた「磁気ネックレス」では、単価が高い宝石店の方が利益率が高そうですよね。

石原 はい。

石原明(いしはら・あきら)
日本経営教育研究所代表
僖績経営理舎株式会社代表取締役
ヤマハ発動機株式会社を経て、外資系教育会社代理店に入社。約6万人のセールスパーソンの中で、トップクラスの実績を収める。「セールス・マネージャー世界大賞」を受賞後、日本経営教育研究所を設立し、経営コンサルタントとして独立。中小企業から大企業まで、業種や企業の規模を問わず幅広いコンサルティング活動を行っている。毎年の講演回数は100回以上。ビジネスの発想力やマーケティング力を開発・育成する「高収益トップ3%倶楽部」には、全国延べ4500社が参加。2万人の読者を抱えるメールマガジン『社長、「小さい会社」のままじゃダメなんです!』や、独自の視点で経営を綴るブログ『石原明の経営のヒント』も執筆中。毎週金曜日に配信する人気Podcast番組『石原明の経営のヒント+(プラス)』は累計ダウンロード数2200万回を超えている。著書に、『営業マンは断ることを覚えなさい』(三笠書房)、『「成功曲線」を描こう。』(大和書房)、『トップ3%の会社だけが知っている儲かる仕組み』(KADOKAWA)などがある。

高井 でも、一度ネックレスを購入したお客さんは2本も3本も買わないものです。しかし、はちみつ屋の方は、はちみつを最初のステップとして、顧客と関係を作り、単価の高いプロポリスやローヤルゼリーを定期的に継続して購入してもらっていたんです。そうなるとトータルでの売上は、はちみつ屋さんの圧勝です。
 このように儲けるには「継続して高額商品を買ってもらう」ように、自然に導くような仕組みが大切なんですね。(→立ち読みができます)

石原 なるほど…。おもしろいですね。私の感想としては、本のラストの部分、経営に苦しんでいたカフェのオーナーがどのようにして成功したのか、その話をもっと詳しく読みたいと思いました。ワクワクしながらページをめくっていきましたので、その部分をもう少しふくらませると、もっともっと面白くなるのではないかと…。でももしかして、最後に彼の成功をさらっと伝えて終わっているのはわざとですか? 2作目を想定して仕組んでいるのかも、と勝手に深読みしましたけど(笑)。

高井 石原さんは鋭いですね(笑)。主人公の遠山桜子をシリーズ化できれば…とは考えています。私はいろんな業種・業態のモデルとなる経営者の方々とお付き合いがあるので、ネタはたくさんあるんです。ですから、2作目、3作目も書けると思います。

 今回の著作も全体を通してふくらませようと思えばいくらでもふくらませられるのですが、とにかく簡単に理解できて、楽しく読んでもらえるようにしました。

石原 やはりそうでしたか!(笑)