ハイブリッドカーや電気自動車、そして太陽光発電・・・、今後の日本経済を牽引すると期待されているこれらの製品に欠かせない資源がある。ニッケルやプラチナ、レアアースなど「産業のビタミン」と言われるレアメタル(希少金属)だ。

今後の日本経済の牽引役ともいえるハイブリッドカーや電気自動車に欠かせない資源「ニッケル」(レアメタルの一種)【写真右】。資源高が進む中で、国を挙げての争奪戦が始まっている。

 しかしいま、資源高が進む中で、エコカーに必要なレアアースの価格は急上昇。さらに、国をあげて世界中で資源確保に動いている中国を相手に、日本は権益の獲得で厳しい戦いを強いられており、産業界の危機感が高まっている。

 日本経済のカギを握るレアメタル確保の最前線で何が起きているのか、そして日本はどんな戦略をとるべきなのか。

ボツワナで起きた
レアメタル争奪戦

 アフリカ南部、人口200万足らずのボツワナ。世界有数のダイヤモンドの生産国として知られるこの国に、いま世界各国が、レアメタルを掘り当てようと殺到している。狙うのは、リチウムイオン電池に欠かせない、ニッケル。

ボツワナ最大のBCL鉱山。地下700メートルまで掘り下げ、リチウムイオン電池に欠かせない「ニッケル」を発掘。このニッケルを求めて、世界中の国がボツワナに殺到している。

 4月上旬、私たちが訪れた国内最大のBCL鉱山では、地下700メートルまで降りてニッケル鉱石を掘り出していた。通常、ひとつの鉱石に含まれるニッケルは、全体の1%前後とごくわずかだが、光る部分には微量のコバルトも入っているという。現場の作業員は、「ここは宝の山だ」と話す。

 この鉱山の近くで、日本はいま、独自にニッケルを掘り当てようと、初めてのボーリング調査を行なっている。経済産業省所管のJOGMEC「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」とオーストラリアの企業との共同調査だ。

 最大で地下600メートルまで掘り下げ、レアメタルの鉱脈を探し当てようとしている。私たちが訪れたときには、地下210メートル地点の岩石が掘り出されていた。それは様々な成分が含まれた、まだら模様の石の柱だった。

 レアメタルは、まばらに、しかもごくわずかにしか存在しないため、掘り当てるのが非常に困難だ。さらに、取り出すには特殊な技術が必要で、費用と手間がかかる。JOGMECの鈴木哲夫さんは、

「レアメタルの探査には時間がかかる。3年、4年、5年、そういったスパンで、われわれは計画をたてていきたい」

と話している。