単なるクルマの祭典から
クルマの近未来を語るイベントへ

東京モーターショーが開催されている。会場を訪れて感じることは、単なるクルマの祭典というより、クルマの近未来を語るイベントへ脱皮したということだ

 2年に1回の東京モーターショーが、11月8日まで東京・有明の東京ビッグサイトで開催されている。連載第17回で東京モーターショーが1つの転機を迎えていることに触れたが、どうも今回の東京モーターショーを見ると、単なるクルマの祭典というより、クルマの近未来を語るイベントに脱皮したという観を強くした。

 その主役は、環境対応を目指す燃料電池車を含む電動車両であり、安全対応を目指す自動運転車であり、渋滞対応を目指すコネクテッドカーである。それがいずれも未来車でなく、2020年、あるいは2020年代という、もうすぐ手の届く近未来を志向するものだということである。

 もちろん、自動車の環境対応や安全対応への技術進化は著しく、自動車メーカーだけでなく、大手部品サプライヤーやIT企業、あるいは人工知能(AI)を手がける企業なども相まって、クルマのハード面プラスソフト面の技術競争は激しい。一方で、これに連動するインフラ整備や国の法整備には課題がある。

 日本では、安倍政権による成長戦略と来たる2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、官民挙げてモビリティ社会の方向性を示そうという戦略的な面も見える。

 いずれにせよ、東京モーターショーに先立つ独フランクフルトモーターショーの開催中に起きた、主催国の盟主・フォルクスワーゲンのディーゼル車不正問題に対して、日本車産業が世界をリードする環境・エネルギー、安全対応への技術力において主導的役割を果たしていることを、この東京モーターショーでは改めて感じさせられた。

 20世紀は「自動車の世紀」と言われた。自動車は快適で便利な移動手段であり、かつ物流面でもトラック(商用車)がきめ細かな配送で大きな存在感を示すようになった。それがこの21世紀においても、移動手段として変わらぬ位置づけを示し、サスティナブル・モビリティ(持続可能な多様な移動体)を形成していくためには、3つのハードルをクリアしていかねばならないとされる。

 環境・エネルギー、安全、渋滞――これが自動車に課せられた3つの社会的課題である。移動手段として便利で快適な自動車だが、負の側面も併せ持つ。安全は「命題」であったし、環境は地球温暖化対策として避けて通れない問題だ。かつエネルギーは、いずれ訪れる化石燃料枯渇化への対応であり、渋滞対応は道路整備とも関係し、通信機能との連動で効果が生まれる。

 今回の東京モーターショーで、これらのハードルを越えるクルマの近未来が明確に見えたのである。