事業仕分け第2弾の後半戦が始まりましたが、あまりにバカバカしくてコメントする気も起きないので、今週は別の話題を取り上げます。

 政府の支援を受けて経営再建中のJALが、稲盛会長の私塾である「盛和塾」の会員に対して様々な割引特典を用意していることが報道されました(21日早朝時点の一部報道では、JALはその後この優遇サービスを一転撤回する方針を固めたとも伝えられています)。しかし、JALが提供しようとした便宜の内容の非常識さまでは詳しく伝えられていないので、今週はこの問題を取り上げたいと思います。

政策論の観点からの非常識

 以前このコーナーで書きましたが、そもそもJALが航空券の安売りを行なうこと自体、政策論の観点からは許容されません。それは、市場の競争を歪めるからです。

 デフレ下で消費者の節約志向が続く中では、JALが少しでも売上を増やそうと航空券の安売りに走りたくなるのは、理解できない訳ではありません。特に、3年で再建を完了するという制約の下では尚更です。

 しかし、JALは出資と融資を合わせて1兆7千億もの公的資金を政府から受け取っています。航空市場は少数の企業が競争する寡占構造にありますので、政府支援により財務的に楽になったプレイヤーが安売り競争を仕掛けると、公的資金に頼らず自力で頑張っている企業が被害を被ることになります。

 実際、JALの安売り攻勢に追随せざるを得なかったANAの収益は悪化しています。公的部門の関与により、航空市場でクラウディング・アウトが生じているのです。

 もちろん、だからと言って、公的資金を受けているから一切値引きせずに通常料金の航空券のみを提供するということも考えられません。市場で一般的に行なわれているレベルの値引きは、JALについても当然許容されるべきです。