「『もしドラ』の続編が出ます」
あの、270万部を超える売り上げを記録し、Amazonのビジネス書部門で15年間の歴代売り上げ第1位にも輝いた、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』の第2弾が、このほど刊行されることとなりました。タイトルは『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら』(通称『もしイノ』)。気になる内容はというと、舞台は『もしドラ』から6年後! そこで、また新たな女子マネージャーたちが、ドラッカーの本を片手に甲子園を目指します。彼らが参考とするのは、今度は『イノベーションと起業家精神』。ではなぜこの本を読むのか? それは、この先読み版を読むことで明らかになります!
いよいよ、『もしドラ』の続編である『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら』(通称『もしイノ』)の舞台が幕を開けます。場所は、前作と同じ東京都日野市――。ただし、前作と違うのは、主人公の所属する学校が「都立程久保高校」ではないところです。今度は、「浅川学園」という私立校。そこに、本作のメインキャラクターである2人の少女、岡野夢(おかの・ゆめ)と児玉真実(こだま・まみ)が入学するところから、物語はスタートします。
プロローグ
夢には夢がなかった。目標もなかった。ただ毎日を、なんとなく過ごしていた。
それでも好きなものはあった。友だちだ。夢には友だちが一人いて、その友だちが好きだった。だから、学校にはその友だちに会うために来ていた。他に理由はなかった。
その友だちとは、中学のときに知り合った。彼女は陸上部員だった。長距離の選手で、いつも校庭を走っていた。
その友だちが走るのを、夢はよく教室の窓から見ていた。ときには日が暮れて、彼女の姿が夕焼けに浮かび上がるシルエットとなり、やがて宵闇に溶け合ってほとんど判別がつかなくなるまで、ずっと見続けていることもあった。
夢は、その友だちが走るのを見るのが好きだった。見ていて飽きるということがなかった。だから、その友だちが陸上部を辞めてしまったときは驚いた。そして、とても残念に思った。また陸上部に復帰してくれないかと、強く願った。
しかし、彼女が再び陸上部に戻ることはなかった。そうして放課後になると、これまでは走っていた校庭を歩いて横切り、早々に帰宅してしまうのだった。
ある日のこと、いつものように校庭を眺めていた夢は、その友だちが帰宅しようとしているのを見つけた。それで、ふと思い立って教室を飛び出した。
夢は、運動をしたことがほとんどなかった。だから、走るのがとても遅かった。それでも、一生懸命走って追いかけ、校門を出たところでなんとか追いついた。そして、こう声をかけた。
「あの、すみません!」
「はい?」
「あの……どうして陸上部を辞めちゃったんですか?」
それが、夢がその友だちと仲良くなったきっかけだった。