当社の場合、JKKの必要性はクルマの進化の歴史をなぞってみるとよくわかります。というのも、昔はエンジン単独で仕事が完結していたので、エンジンの担当者がいい仕事ができたのか、できなかったのかが、比較的すぐにわかりました。馬力が出ないとか、煙が出てしまうなどの不具合が出ると、「エンジンが悪い」で済んだんです。

 ところが、今やありとあらゆる機能部品がコンピュータで制御されるようになり、エンジンも単独で制御されるのではなく、トランスミッション、ブレーキ、ステアリングといった部品が全て一緒に統合制御されるようになった。クルマという商品が複雑性を増していくわけです。エンジンの調子が悪いといっても、エンジンそのものが原因ではない可能性もある。ブレーキやステアリング担当者の責任かもしれないわけですね。

 となると、自分の仕事の責任、つまり「自工程」ってなんだろう? という疑問が改めて湧いてくる。他部署との関連性の中で、自分の果たすべき役割をきちっと規定しないと、もはや仕事がうまくいっているのかうまくいっていないのかすら分からなくなってしまったのです。

 そこで、まずは自工程をしっかりと定義する必要性が出てきた。よく、「JKKって言ったって、自分の仕事なんだからみんな分かってるじゃないか」と社内でも言われるのですが、そうじゃないんだ、ということをまずは理解してほしいんです。

プリウスの要素技術で
コスト低減したミライ

――トヨタ社内における現在のJKKの浸透度は?

 まず製造部門はほぼ100%ですね。それから製造部門に直接結びついている部門、生産技術や量産モデル設計部門も、かなり完成に近いと思っています。

 もっともこれが開発部門になると、まだまだと言えます。例えば去年末に出した、水素エネルギーで駆動する燃料電池車「ミライ」。かつて燃料電池車は「1台1億円」と言われていた時代があったのですが、これは、全く新しいクルマという理由で全て専用開発をしていたからなんです。

 ところが、すぐ横にハイブリッド車の「プリウス」がいることに気がつきました。プリウスのモーターや電池を使えば、燃料電池車で新たに開発が必要なのは高圧の燃料タンクと発電部分だけじゃないか、と。最終的に、プリウス技術の流用で燃料電池車のコストがぐっと下がったんです。