トヨタの現役幹部による最新刊『現場からオフィスまで、全社で展開する トヨタの自工程完結』から、読みどころを抜粋してお届けしています。今回は、仕事の質を向上させるために、トヨタが新たに取り入れた考え方「自工程完結」とはどういう問題を取り扱うのか、カンタンに紹介します。
オフィスでよく見る残念な風景
例えば、こんなことがオフィスで起きていないでしょうか。
1.「これをまとめておいてくれ」と上司に書類作りを依頼された部下。「はい! わかりました!」
ところが、でき上がった書類を見て、上司はイマイチ顔。
上司「いや、これはお客さまとの打ち合わせに使うものなので、社内用語を散りばめたような書類を求めていたんじゃないんだよね……」(先に言えばよかった)
部下「やり直しですか……」(先に言ってくださいよ)
部下は一生懸命に仕事をしていたのです。ところが、上司の評価が得られなかった。どうしてこんなことが起きてしまったのか。それは、こういうことではないでしょうか。
→ 何のために資料をまとめるのか、「目的」の共有がなかった。
ほかにも、こんなことが起きていないでしょうか。
2.「部長との相談のために、このデータをまとめておいてくれないか」と上司にお願いされた部下。「はい! わかりました」(よし、頑張ってまとめるぞ)
ところが、上司は不機嫌顔。
上司「いや……。こんなに細かくなくてもよかったんだけど……」(しかも上がりが遅い。もっとざっくりでよかったんだよ)
部下「そんな簡単なものでよかったんですか……」(なんだよ、もう)
これもまた、部下は一生懸命に仕事をしていました。なのに、上司の残念そうな声が聞こえてしまった。どうしてなのか。こういうことだと思うのです。
→ どんな資料をまとめるのか、「アウトプットイメージ」を共有できていなかった。
例はほかにもあります。
3.「これ今日中にできるでしょ。やっといて!」と上司から言われた部下。「はい! わかりました」
ところが、上司は夕方になってイライラ顔。
上司「まだできないの? 早くしろ。あと一時間しかないぞ」(ったく、ちゃんとやり方まで教えておけばよかった)
部下「はい、急ぎます」(最初にやり方まで確認しておけばよかった……)
上司は任せて大丈夫だと安心していた。部下もできると思っていた。なのになぜ、こんなことが起きてしまったのか。こういうことではないでしょうか。
→ どうやって資料を作るのか、具体的な「手順」が共有されていなかった。
こんな例もあります。