――トヨタにも縦割りの弊害が起きていたのですね。それはいつ頃のお話ですか?

 ミライの企画の頃から、既に「プリウスの技術を使えば1000万円を切れるな」という感触は掴めていました(※編集部注:実際の販売価格は約724万円)。

 ミライとプリウスを要素技術にどんどん分解していくと、「プリウスと全く一緒じゃないか?」という要素が随分と出てきた。全く新しい燃料電池車といっても、新しい部分は非常に限定されているということが次第に分かってきたわけです。ここにもJKKの精神は含まれています。すなわち、JKKは「全ての仕事を要素技術にバラせ」という考え方で、社内の有り物を上手に使いましょうという精神でもあるのです。

米IT企業の
スピード感を意識

 それからもう1つ、これからの時代において最も大事だと思っているのは、組織の意思決定の速さです。

 いわゆる欧米型経営スタイルというのは、トップの意向が最も尊重され、トップの決定以降は各部門がそれをいかに素早く実現するかを考えて動くので、スピード感もある。

 一方、トヨタは、トップが言ったことに対して、各部門が専門性をもってそれぞれ解釈し、アイデアを熟成して完成していくというビジネススタイルです。この“トヨタウェイ”は、今後も続くと思うんですね。

 このスタイルだとアウトプットの質は上がりますが、しかし問題はスピード感を持った意思決定ができないことにあります。

――今や異業種の米グーグルや米アップルが自動車開発に乗り出すのかどうかが話題に上る中、こうしたIT企業の意思決定の速さにも脅威を感じていらっしゃるのでしょうか。

 感じていますよね。やはり自動車業界自体、意思決定の遅さが致命的になる業界へ近づいているというのは事実なんですよ。今後、IT企業と組んで何かを一緒に作ろうとなると、彼らのスピード感とわれわれのスピード感のズレが致命的になる恐れがある。

 とはいうものの、トヨタはビジネススタイルを変えるつもりはない。クルマというのは人の命を乗せて走るものですし、一歩間違えると排ガスや交通事故など、社会的な負の影響が大きい商品特性を持っています。となると、専門性を持った各部門が考えに考え抜いた末にモノを作り上げていくという部分も、やはりものすごく大事なんです。