この彼女のように、連日残業が必要なくらいにハードワークをこなしながらも、さらにボランティアまでしてしまう。自分が成長できる可能性を感じたり、もっと単純に面白そうと思ったりした場合、どこまでも貪欲に関わろうとする。これが若きハイスペック人材のメンタリティであり、マインドセットなのである。

ひとつの価値観を
社会全体で押し付ける無意味さ

 もちろん、世の中にはこのような価値観を持った人ばかりではないことも十分承知している。ワークライフバランスを重視する価値観の持ち主もいて、そうした人にとっては、ノー残業、ノー休日出勤はとても重要だ。また、ワークライフバランス重視の人材が、必ずしも仕事ができない、または仕事への意欲が低いわけでもない。仕事より趣味が大事と言いながら、その趣味の世界で得た情報や経験や人脈をちゃんと仕事に活かしているような人もいる。その一方で、パタゴニアのように、晴れた日には社員をサーフィンに行かせることを推奨している会社もあり、そうした文化が業績に良い影響を与えたりしているケースもある。

 つまり、僕が何を言いたいかというと、企業にとって重要なことは、「多様性」だということ。晴れた日にはデスクワークなどせずにサーフィをしたい人もいるし、サーフィンなど全く興味がなくて、晴れていようが雨が降っていようが、ひたすら新しいプロジェクトを追い求めて企画会議、企画作業をしたい人もいる。また、同じ人間であっても、月日を経て大きく価値観が変わったりもする。若い頃はハードワーク志向だったが、結婚して子どもができて家族を大事にするようになり、ワークライフバランス志向になる人もいるのだ。つまり、仕事の価値観だけを取っても、人によって様々だということである。

 よって、かつての日本のように、「仕事優先で家族を犠牲にするのは当たり前」とか、あるいはその反動から「ワークライフバランス絶対でハードワーク禁止」といったように、あるひとつの価値観を社会全体で押し付けるほうが間違いだと言えるだろう。

 ただし、そもそも企業というのは、「共通の価値観」を持った人間のコミュニティであるという側面も持つ。共通の価値観というものは、(誤解を恐れずに言えば)ある種の排他性を持つ。晴れた日には社員をサーフィンに行かせる会社は、サーフィンとかアウトドア・スポーツに対して価値観が高い人の集まりであり、そうでなければ高い競争力を持った独自の文化を作れない。このような会社にインドア派のゲーマーを入社させても、居心地が悪くてすぐに辞めてしまうかもしれない。