ステップ(3)
「下流」からも考えてみる
ツリーの上流で分解できる軸がなかなか見つからないときは、それにこだわらず、より下流のかたまりから検討していくようにしよう。
このときに役立つのが、ステップ(1)の直感で出したアイデアだ。直感で出てくるアイデアというのは、より具体的なものであることが多い。つまり、基本的にツリーの末端(最下流)に近いところに位置することがほとんどだ。
上流で分ける軸が見つからなかったとしても、より下位の小さなかたまりでは、MECEに分けられる可能性がある。それをきっかけにして、より上流の軸を探していく「下流から上流へのアプローチ」がステップ(3)である。
ただしここでも、「上流へ遡る」ことを意識してほしい。直感で思いついた具体的なアイデアからさらに下流へ降りていっても、なかなか発想が広がっていかないからである。それらのアイデアを包含する、より上位の軸を見つけ、またそこから分解を繰り返して発想を広げていくようにしよう。
たとえば、ある商品の売上不振の原因を探っているとしよう。
宣伝部のメンバーが集まり、直感でブレーンストーミングをしたところ、「テレビCMの出演タレントに原因がある」という仮説が出てきたとする。
ここから考えてしまうと、「テレビCMに原因がある」を基点に「テレビCMシナリオに原因がある」とか「テレビCMを打つ時間帯に原因がある」といったアイデアも発想できるだろう。あるいは、ほかのプロモーション施策についても問題意識が向かう可能性はある。
こうして僕たちの思考には「バカの壁」が入る。この場合なら、宣伝部のメンバーは「プロモーション施策に原因がある」という前提のもとでしか発想できていない。だが、ひょっとすると売上不振の原因は商品そのものや価格にあるのかもしれない。
たとえばこのとき、売上不振の原因を「マーケティングの4P」にしたがって、「製品に原因がある」「価格に原因がある」「プロモーションに原因がある」「流通に原因がある」という具合に最上流で分解していれば、こうしたモレは起きづらいだろう。
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以上、3つのステップを紹介したが、ステップ(2)や(3)を試してもまったくツリーがつくれないようであれば、その問題に対しては論理思考によるアプローチはあきらめたほうがいいだろう。だとしても、ステップ(1)でひと通りのアイデア出しをしているので、結果がマイナスになることは回避できている。
危険なのは、論理思考によるアプローチを万能視するあまり、最初からモレなく分解しようと企てることである。もともと論理思考の力が高い人であればいざ知らず、ふつうの人がいきなりこれをやってしまうと、かえって発想が広がらなくなることがある。まさに「生兵法は大怪我のもと」の典型だ。
「論理思考はあくまでも直感を補助するものである」と心得ておくようにしよう。