ステップ(1)
ひとまず直感でアイデアを出す

多くの人が広く考えたつもりになっているだけで、じつは場当たり的に思いついた狭いアイデアしか出せないでいる。だから「論理的に」考えて発想を広げることこそが、アイデアの質を高めるためには欠かせない。

とはいえ、考えるというのはとても時間がかかることだし、決して効率がいい行為ではない。場合によっては最初の手がかりが見つからないまま「うーん」と唸っているうちに時間が過ぎていってしまうことだってありうる。

だとすれば、「0」よりはやはり「1」を優先すべきだ。直感でもひらめきでも思いつきでも何でもいいから、頭に浮かんだことをどんどん引き出してしまおう。

アイデアを顕在化するというのは「書く」ということだ。多くの人がやっているとおり、ひとまずの思いつきを、紙にアウトプットしてしまうおう。
このとき大切なのは、変に発想を評価しないこと。とにかく書き出してみる。「モレが出ないようにしなければ……」という思いに縛られてしまい、腕組みをしたまま一歩も進めないよりは、そのほうがはるかにいい。

実際、研修で演習問題を受講生たちに解いてもらうときにも、僕はまず「とにかく最初は、直感でいいので書いてください」と言うようにしている。どれだけ座学で論理思考の本質を説明したあとであっても、いきなりそれを実行に移せる人というのはなかなかいない。むしろ、モレなく考えようとするあまり、かえって思考のモレが多くなるという本末転倒なことが起きたりもしている。

たとえば、あるテーマをモレなく分解するという場合(下図)、本来3つの項目(A~C)に分けられるのに、2つ(AとB)にしか分けられなかったとする。さらに、A以下についても、十分に分解できなかったところでタイムアップとなってしまった。

これは上段の分解例と比較すると、25%(16分の4)までしか発想が広がっていない状態である。発想を広げるために論理思考をしたはずなのに、たったこれだけしかアイデアが出ないのでは意味がない。

もしも同じ人が論理思考に頼らずに、直感だけで8個のアイデアを発想できるのだとしたらどうだろうか?(発想率50%=16分の8
この論理思考は失敗だったということになりかねない。

「まずは直感、そのあとに論理」にしたほうがいいのは、こうしたケースを避けるための「保険」でもある。直感でアイデアを出しておけば、プラスになることはあっても、マイナスになることはない。時間制約の中で戦わねばならないビジネスの場面では、「ベストよりベターを狙う」というスタンスは不可欠だ。まずは直感で頭に浮かんだことを、とにかくたくさん書くようにしよう。