トヨタ現役幹部が手掛ける『現場からオフィスまで全社で展開する トヨタの自工程完結』が話題だ。タイトルに入れば売れる、と言われている「トヨタ関連本」の中でもとりわけ耳慣れない『自工程完結』という言葉には、実はとんでもない仕事のスキルが隠されていた。クリエイティブ系の人にこそ読んでもらいたい、その逆転の発想とは――。(文/斎藤哲也)
どうすればホワイトカラーの
生産性を高めることができるだろうか
本書、『現場からオフィスまで全社で展開する トヨタの自工程完結』は、ホワイトカラーにとって、とても耳の痛い話から始まっている。
日本企業の強みは何かと問われたら、多くの人は「現場」と答えるのではないだろうか。一度でも、製造業の工場見学をした人ならばわかると思うが、生産効率を高め、品質管理を徹底するための創意工夫が工場内には満ち満ちている。現場の技術力や製品の品質の高さは、いまなお世界一といっても身びいきにはなるまい。
だが、それに比べて日本のホワイトカラーの影は極端に薄い。やたらと会議は長く、意思決定にも時間がかかる。日本企業の最大の弱点は、経営層も含めたホワイトカラーにあるというのもよく耳にする話だ。
どうやら事情は、トヨタでも同じらしい。トヨタで長年、品質管理畑を歩んできた著者は、次のように厳しく指摘する。
〈トヨタの現場はすごい、と言われます。技術の高さ、製品の品質の高さは、世界で評価されています。しかし、ホワイトカラーについてはどうでしょうか。トヨタのホワイトカラーの仕事がすごいとは、誰も言ってくれません〉
では、どうすればホワイトカラーの生産性を高めることができるだろうか。
本書は、この難題に対するトヨタの取り組みを解説したものだ。トヨタでは、二〇〇七年一月から、現場で大きな成果を挙げていた新しい取り組みを、スタッフ部門の仕事にまで広げていくことが決まった。それが本書のタイトルにもなっている「自工程完結」と呼ばれるものだ。